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宇佐美貴史の出場機会が急増中。
「弱者のサッカー」も出来るのだ!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/12/15 11:30
宇佐美貴史がある種の「天才」であることは間違いない。その能力を爆発させる準備は、着々と進行中だ。
「守備もできる選手」というレッテルを自分で貼る。
ケルン戦から3試合続けて起用されているのも、そうした姿勢とも無関係ではないだろう。しかも、21分間出場したHSV戦にしても、宇佐美がベンチ前で交代の準備をしている間にアウクスブルクのコールが退場し、その2分後に先制点を奪われてしまったために、監督とコーチが対応を話し合うハプニングがあった。そのため、すでにウォーミングアップを終えていた宇佐美はベンチで10分弱にわたって、待機することになった。一連の動きがなければ、出場時間は実際の21分ではなく、30分近くにまで伸びていたはずだ。
宇佐美も、監督の求めるサッカーへ適応してきていることが、出場時間が伸びている要因の1つだという手ごたえがある。
「(技術的な)ミスをせず、左サイドから連係を作っていくことはもちろん持ち味ではあるので、それはやります。ただ、それプラス、守備でも(走りまわる)。僕が途中出場で入って失点していることはないですし、左サイドから崩されているっていうのもない。
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『どういう状況でも使える選手』とか『守備も出来る選手』だというレッテルを自分から貼っていく、ということですかね。そういうのを少しずつでも、見せていければ……。あとは(攻撃の部分で)どうなるか、何が起こせるか、ということになると思いますね」
宇佐美がIQテストを受けたら相当高いのでは。
もしも宇佐美がIQテストを受けたら、その成績はサッカー選手の中でトップクラスになるのではないだろうか。華麗なプレーばかりがフィーチャーされがちだが、それくらいに地頭が良い。状況を理解し、それを言葉で表現する能力も群を抜いて高い。将来、彼がかもし出すオーラと言語化する能力でもって、宇佐美が優秀な監督となったとしても、少しも不思議ではない。
しかしそんなのは10年、20年と先の話だ。大切なのは今、何をするかである。
香川真司がファーガソンに請われてマンチェスター・ユナイテッドへ移籍したとき、27年間指揮をとっていた監督の代わりに、ポンコツの指揮官がやってくるなどとだれも予想できなかったはずだ。
日本人選手からだけではなく、海外の選手からもプロ意識の高さを評価される長谷部誠が、よりによって恩師であるマガトに干されることになると予想するのも難しかった。細貝萌がヘルタのキャプテン候補にあげられながら、監督交代とともに戦力外扱いを受けることになると誰が予想できただろうか。
サッカーの世界にかぎらない。そんな理不尽さはどんな世界でもある。