サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ボールが収まる大迫のありがたさ。
“正しい競争”でハリルJは甦った!
posted2016/11/16 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
ロシアW杯アジア最終予選をのちに振り返ったときに、2016年11月15日は日本代表の転換点と位置づけられるだろう。過去4試合とは明確に区別されるアプローチで、日本はサウジアラビアを2-1で退けた。
変化をもたらしたのは、“正しい競争”だった。
ここまで消化した最終予選の4試合で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は所属クラブで出場機会の少ない選手もスタメンで起用している。チームの集合からほとんど間を置かずに実戦を迎えることもあり、選手の入れ替えを最小限にとどめてきたのだ。
今回のサウジ戦は違った。4日前の11月11日にオマーンとテストマッチを消化し、海外への移動で練習時間を削られることもなかった。
果たして、ハリルホジッチ監督は本田圭佑、岡崎慎司、香川真司をスタメンから外す。本田と岡崎は所属クラブでの出場が限られ、香川は足首に痛みを抱えていた。
代わって先発したのは久保裕也、清武弘嗣、大迫勇也である。久保と大迫は所属クラブでポジションをつかんでおり、コンディションは申し分ない。大迫はオマーン戦で2ゴールをマークし、久保も代表デビューを飾っていた。
清武はセビージャのレギュラーではないものの、オマーン戦で1得点2アシストを記録した。実戦から遠ざかっている選手は積極性を失いがちだが、この背番号13は相手守備陣の脅威となった。トップ下として先発する資格があることを、直前のテストマッチで証明していたのである。
代表にコンビネーションが復活しつつある。
戦術的な変化も見逃せない。
ハリルホジッチ監督指揮下の日本が、最終予選で苦戦を強いられてきたのはなぜか。最大の理由は「らしさの欠如」にある。
指揮官が求めるタテに速いサッカーを意識するあまりに、攻撃からコンビネーションが削り取られていたのだ。選手同士の距離感が遠いために、ワンタッチでボールをさばける場面が少ない。その結果として攻撃のスイッチがなかなか入らない、攻撃がスピードアップしない、数的優位を作れない、相手守備陣を揺さぶれない、といった弊害が生じていた。ゲーム体力やゲーム勘の欠如を隠せない選手がいたのも、組織ではなく個で戦う局面が多かったからである。