サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ボールが収まる大迫のありがたさ。
“正しい競争”でハリルJは甦った!
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/11/16 11:30
前線で大迫勇也が発揮した「収める力」は攻撃の厚みを大きく向上させた。ここから振り向いてシュートを狙えるのも彼の武器である。
自分が決める、止める、という意識が見えた。
試合後のハリルホジッチ監督は、「何度か慌てた状況があった。ゴール前の冷静さがあれば、4、5点は取れた」と振り返っている。打ち急いだと思われるシュートや、より良い選択肢を見つけられたはずのシュートは、確かにあっただろう。
ただ、ゴールへ結びつかなかったシュートにも、自らが決定的な仕事をするとの意思を読み取ることはできる。「どうしてパスをする?」とか「なぜ打たない!」といったため息がスタンドから漏れなかったのは、“当事者意識の表われ”と理解していい。
「自分がゴールを決める」とか「自分が相手を止める」というプレーの積み重ねが勝敗を左右し、ひいてはチームの底上げを促していくのである。
海外組が所属クラブで出場機会を得られないリスクは、来年3月に再開される最終予選の後半戦でも想定される。それだけに、本田、香川、岡崎の3人がベンチスタートでつかんだ勝利は価値を持つ。“正しい競争”が個々の“当事者意識”を高め、チームの総合力を押し上げていくサイクルを、ここから加速させていくべきである。
接戦なだけに、最後の1失点は重く受け止めたい。
サウジ戦で見落としてはいけないことが、もうひとつある。
後半終了間際の失点は、重く受け止めるべきだ。1点差に迫られただけでなく、2点目を許してもおかしくないシーンを、作られてしまったことも。
サウジと日本が勝点10で並走し、オーストラリアとUAEが勝点9で追いかける最終予選グループBは、先の読めない展開となっている。イラクとタイを除く4カ国によるサバイバルは、得失点差や総得点によって順位が決定するかもしれない。1点の重みを受け止める最後の機会としても、2016年11月15日を転換点としなければならないのである。