錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭は外よりインドアで強い!
ファイナルズ優勝が現実的な理由。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAP/AFLO
posted2016/11/07 11:50
10月中旬には、世界ランク4位だった錦織の、ツアーファイナルズ出場が正式に発表されていた。
この大会、錦織が優勝する要素は沢山あった。
ドロップショットを多用する繊細なプレー、勝負どころで試みるサーブ・アンド・ボレーなどは、風や温度・湿度といった自然環境に影響されないインドアだと成功率が上がる。
インドアの大会はビッグサーバーに有利とはよく言われるが、ビッグサーバーの代表格であるイボ・カルロビッチやジレ・ミュラー、ケビン・アンダーソンなどとの対戦のうち、(特に近年では)インドアではいつも錦織が勝ってきている。アウトドアの大会でも雨や暑さのために屋根を閉めるケースがあるため、それらも含めればさらに勝率は上がるのではないだろうか。
プラス、過去の優勝者の顔ぶれを見ると、この大会、あることに気付く。
世界1位やグランドスラム優勝経験のない選手の数が、他のマスターズに比べて極端に多いのだ。フェデラーとラファエル・ナダルの2強時代が始まった2005年以降、これまでの11年間で6人。ほかの8大会は合計しても5人しかいない。
ツアーファイナルズ出場がかかった重要な試合だった。
パリのマスターズで勝っている6人というのは、トマーシュ・ベルディヒ(2005年)、ニコライ・ダビデンコ(2006年)、ダビド・ナルバンディアン(2007年)、ツォンガ(2008年)、ロビン・セーデリング(2010年)、ダビド・フェレール(2012年)たちだ。そのうちダビデンコを除く全員がグランドスラムの準優勝者なのである。その点でも錦織は彼らと共通していた。
彼らの多くはグランドスラムにおいてビッグ4の壁に阻まれ、最後に涙をのむような強者たちだ。そんな彼らの唯一の勲章となっているような大会が、このマスターズのパリ大会なのである。
その背景として、この時期になるとツアーファイナルズの出場者がほぼ固まっていることがあるかもしれない。トップ数人はどちらかというとファイナルズのほうに焦点を当てている。
そして、まだ出場権を得ていないが、チャンスを残している数人の選手たちが大きな力を発揮する。
錦織に勝ったツォンガはまさにそういう状況にある選手の1人だった。