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最高の錦織圭は「波のない湖面」。
ツォンガ戦敗因はギラギラの欠如?
posted2016/11/04 11:40
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
先週のスイス室内で準優勝。順風に乗ってパリのBNPパリバ・マスターズに乗り込み、マスターズ1000初制覇の期待もあった錦織圭だが、3回戦でジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)に敗退という結果に終わった。
過去の対戦では5勝2敗。今年の全豪でも6-4、6-2、6-4と快勝している。お得意さんという言葉はふさわしくないが、勝負付けは済んでいるはずだった。
リターンのうまい錦織は、ツォンガの武器であるサーブを苦もなく――本来そんなはずはないのだが、見た目にはいかにも易々と――返してしまう。パワーがあり、速いボールを打つツォンガだが、動きの速さ、ボールを捉えるタイミングの早さを含めたプレースピードでは錦織がはるかに上だ。
ツォンガには、バックハンドスライスを多用して遅いテンポのラリーに持ち込むか、力任せにガツガツ打っていくくらいしか、対錦織の策がないのだ。
1セットは6-0の楽勝、しかし……。
この日は後者が主体だった。錦織から時間を奪おうとボールのスピードを高め、タイミングを早めようと試みたのだ。第1セットはそれが空回りして、トップ20同士の対戦ではめったに見られない6-0というスコアになった。
第2セットに入ると、様相が変わる。ツォンガには、シーズン最終戦のツアー・ファイナルズ出場の可能性がわずかに残っていた。1年の集大成として選手が目標に掲げる晴れ舞台である。前日の会見では「まったく意識していない」と話したが、可能性がある以上、それを追い求めるのが選手である。モチベーションの高さは傍目にも明らかだった。
その前のめりが裏目に出たのが第1セットだったとも言える。セットを落として逆に集中力が上がったのか、強打がコートの中に収まり始めた。