錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭は外よりインドアで強い!
ファイナルズ優勝が現実的な理由。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAP/AFLO
posted2016/11/07 11:50
10月中旬には、世界ランク4位だった錦織の、ツアーファイナルズ出場が正式に発表されていた。
崖っぷちの選手が、尋常ならざる力を発揮する時。
負ければその場でファイナルズへの道は閉ざされる。
そういう切羽詰まった状況からくるモチベーションがいかに大きいかということは、先週のバーゼルの決勝で錦織を破ったマリン・チリッチが証明したばかりである。
チリッチは錦織に勝つことで出場権確保に大きく近づけるという状況だった。そのプレーには気迫と執念がこもり、錦織が優位に運ぶことが多いラリー戦に深く鋭いショットで打ち勝った。実際、あの500ポイントが効いてこのパリの準々決勝に駒を進めた時点で出場権を得ている。
ツォンガの場合、出場切符はもっと遠いところにあり、たとえ錦織に勝ったとしてもさらに勝ち続けて優勝しなければ自力獲得はなかった。それでも一縷の望みにかける思いに加え、ホームの観客の後押しがあったのだ。
第1セットを0-6で失いながらも、「だんだん落ち着いてきて、自信を取り戻していった」というツォンガに、彼を取り囲むあらゆる状況がエクストラの力を与えたのだろう。錦織のマッチポイントでツォンガのリターンがネットインしたポイントはその象徴のようであり、デュースからの錦織の2ポイント連続のダブルフォルトはそうしたムードの中で気圧された結果だったのだろうか。
「500」が取れなかった、初めてのシーズンに。
こうして、錦織は今季のマスターズシリーズの中でもっとも成績の悪いベスト16に終わった。目標だったマスターズのタイトルには今年も届かず、先週チリッチに敗れたことで「500(ワールドツアー500シリーズ)」のタイトルも獲れなかった。
錦織がこのカテゴリーのタイトルを獲れなかったシーズンは、この5年で初めてのことだ。
2012年には楽天オープン、2013年はメンフィス(現在はワールドツアーの「250シリーズ」だが当時は「500シリーズ」だった)、2014年はバルセロナと楽天オープン、そして昨年はバルセロナとワシントンで優勝している。