Jをめぐる冒険BACK NUMBER
降格危機が磐田から奪った「強気」。
まず走れ、そこから全てが生まれる。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/02 11:00
チームが押し込まれた結果ジェイは前線で完全に孤立していた。技術よりも、勇気こそが今のジュビロが抱える最大の問題だ。
ジレンマを解消するには、まず走るしかない。
'11年から在籍し、'13年のJ2降格も、'15年のJ1復帰も経験しているセンターバックの藤田義明が、ファーストステージとの違いについて指摘する。
「ファーストステージはチームの守備がすごく良くて、前からどんどん奪いに行けていたからラインを高く保つことができて、コンパクトに戦えていた。それが良い攻撃にも繋がっていたんです。でも、セカンドステージに入って勝てないことで弱気になってしまっているのか、それがなかなかできない」
良い攻撃ができないから良い守備ができないのか、良い守備ができていないから、良い攻撃ができないのか……。
このジレンマを解消するためには、まず走ってみることだろう。アクションを起こさなければ、スペースもパスコースも生まれない。ましてや3人目の動きで崩すことなど不可能だ。あれこれ考える前に、開き直ってとにかく動く。そうして、本来の戦い方とリズムを取り戻すしかないだろう。
狙って引き分けられるチームならこの順位にはいない。
磐田にとって大きいのは、肝が据わった指揮官がいることだ。再び藤田が続ける。
「名波さんは自分たちのスタイル、やるべきことをブレずに言い続けてくれている。そこは前回(降格した'13年)と違うところで、あの時はそれが曖昧で、おそらく誰に聞いても『なんだろう?』っていう状況だったと思うんです。でも、今は名波さんが提示してくれているものを僕らは理解している。そこに向かってやるだけです」
幸いにも、残留を争うヴァンフォーレ甲府、アルビレックス新潟、名古屋グランパスの3チームがいずれも敗れ、13位の磐田は次節、引き分けでも残留が決まる最も優位な立場にいる。
だが、狙って引き分けられるほど強かなチームなら、この順位にいないだろう。ベガルタ仙台との最終節で目指すのは勝利のみ。ボランチの上田が気丈に語る。
「ここで自信をなくしてしまうのが一番良くない。チャレンジャーのつもりでアグレッシブに行くことが勝利につながると思います」
猛烈なプレッシングと、2列目、3列目からの飛び出し。ハードワークで鳴らす仙台を運動量で上回ったとき、磐田は来季もJ1で戦う権利がつかめるはずだ。