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降格危機が磐田から奪った「強気」。
まず走れ、そこから全てが生まれる。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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posted2016/11/02 11:00

降格危機が磐田から奪った「強気」。まず走れ、そこから全てが生まれる。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

チームが押し込まれた結果ジェイは前線で完全に孤立していた。技術よりも、勇気こそが今のジュビロが抱える最大の問題だ。

ジェイとアダイウトンに頼ることすらできない。

 なかでも指揮官と選手が口を揃えていたのが「ボールを奪ったあとのファーストプレーの質の低さ」だ。

 見せ場を作れなかった右サイドハーフの太田吉彰も「せっかく奪っても、奪い返されてカウンターのカウンターをあびてしまった」と悔やんだ。

 勝点23を挙げ、8位で終えたファーストステージにおける磐田はジェイとアダイウトンへの依存度が高く、“外国人頼み”と揶揄されることもあったが、反対に言えば、彼らを活かせるだけのチャンスメイク力と守備力があった。

 だが、1勝しか挙げられていないセカンドステージでは、彼らに頼ることすら難しくなっている。アダイウトンがサイドで仕掛けても、ジェイが前線でボールを収めようとしても、サポートが来ないために簡単に潰されてしまう。

 あるいは、ゴール前で身体を張って浦和の攻撃を防いでも、ジェイやアダイウトンにボールを預ける前に中盤で簡単に失ってしまう。上田康太も宮崎智彦も川辺駿も決して技術のない選手ではないが、ミスパスや判断ミスを犯し、名波監督が頭を抱えるシーンが何度もあった(そのたびにすぐに手を叩き、鼓舞していたが)。

ボールを受けるために走る選手が少なすぎる。

 もちろん、そうしたミスは攻守の切り替えのスピードに磨きをかけた浦和の迫力のあるボール刈りによるものでもある。しかし一方で、パスの出しどころが少ないという自分たちの問題でもある。走っているはずの味方がそこにないからパスを出せない。サポートが近くにいないから、パスコースを探しているうちに潰される……。

 ボールを受けるアクションの量は、パスを繋いで攻撃を組み立てようとするチームにとって、選手の自信をはかるバロメーターのひとつだ。勝てないチームほど、やられるのが怖いから攻撃へのアクションが少なくなっていき、攻撃へのアクションが少ないからなお勝てなくなるという悪循環。こうしてチームは縮こまり、守備においても待ち構えるような、消極的な姿勢が増えていく。

【次ページ】 ジレンマを解消するには、まず走るしかない。

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ジュビロ磐田
名波浩

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