サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
目標がW杯上位進出だとしたら――。
オーストラリアに守ってドローでOK?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/10/12 11:40
原口元気の最終予選3試合連続ゴールで先制するも、勝ち点3を取るには至らなかった。ハリルへの信頼感は維持されているだろうか。
オーストラリアはそんなに危険な相手だったのか?
しかし、根本的な疑問が拭えない。10月11日にメルボルンで対峙したオーストラリアは、ここまで守備を意識しなければならない相手だったのだろうか。ノーマルな戦いかたで挑むことが、大きすぎるリスクをはらんでいたのだろうか。
僕にはそうは思えないのである。
ロシアW杯のアジア最終予選が開幕してから、日本代表の試合内容に前進を感じることができずにいる。ハリルホジッチ監督が目ざすタテに速いサッカーが、悪いというつもりはない。世界のトップ・オブ・トップではない日本のような国が、W杯で成功を収める手段のひとつとしては成立するものだ。
ただ、ゲーム体力の鈍っている選手に何度もスプリントをさせるのは実効性に乏しいだろう。もっとも問題なのは、日本人が得意ではないプレーが増えてしまっていることだ。
攻撃陣が相手に潰される場面が多いのは、ゲーム勘とゲーム体力の欠如に加えて、選手同士の距離が遠いからである。ワンタッチでボールをさばけるサポート関係が生まれていないから、体格差や肉体の強さが局面の攻防にそのまま反映されてしまう。ボールがスムーズにまわらず、攻撃がスピードアップしないのだ。
日本サッカーが大切にしてきたはずの「連動性」や「距離感」は、攻撃面において完全に失われていると言ってもいい。
代表チームには「内容」も必要だ。
ここまで4試合で2勝1分1敗という成績は、ベストではないものの許容範囲ではある。このところ騒がしかったハリルホジッチ監督の進退問題は、ひとまず先送りされるだろう。
しかし、イラク戦の勝利とオーストラリア戦の引き分けで、チームを取り巻く状況は改善されているのか。UAE戦の黒星に端を発した停滞ムードを、払拭することができているのか。
否、そうではない。
代表チームは結果がすべてだが、内容を全く問われないわけではないだろう。
ここで言う内容とは「美しさ」や「見栄え」といったものではなく、「継続性」とそれに付随した「積み上げ」である。