サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
目標がW杯上位進出だとしたら――。
オーストラリアに守ってドローでOK?
posted2016/10/12 11:40
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
アウェイでオーストラリアと引き分けたのだから、1-1というスコアは悪くない。日本代表の公式戦は、とりわけW杯予選は、結果がすべてである。
だが、どうにもすっきりしない。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとっては、マネジメントの難しいゲームだっただろう。海外組の多くがトップフォームでなく、6日のイラク戦後には酒井宏樹が累積警告で、長友佑都が練習中のアクシデントで離脱した。チームに帯同した岡崎慎司も、負傷を抱えていた。オーストラリア戦への準備の時間も、選手起用の選択肢も限られたなかで、指揮官は本田圭佑を1トップに据える4-2-3-1のシステムに辿り着く。
守備的に戦った分、限られた浅野の出場時間。
左サイドバックに起用された槙野智章は、浦和レッズで見せている攻撃への関わりを封印し、最終ラインに決して穴を開けないことを最大のタスクとしていた。同時に、2列目左サイドの原口元気、トップ下の香川真司に絶え間なく声をかけ、守備の局面で彼らを動かす役割も担っていた。
長谷部誠とボランチを組んだのは、柏木陽介ではなく山口蛍である。ふたりのプレースタイルを比較すれば、守備に力点を置いたのは明らかだ。
2列目右サイドが小林悠だったのは、オーストラリアの高さをケアするためでもあった。1トップの本田も同様である。小林が後半37分まで、本田が同39分までピッチに立ったのも、リスタートの局面で高さを担保するためだった。小林は長身ではないものの、空中戦で強さを発揮できる。ケガで交代を余儀なくされなければ、清武弘嗣との交代はもっと遅かったかもしれない。
3枚目の交代カードは丸山祐市だった。退いたのは原口だ。FC東京所属のセンターバックは、最終ラインではなく背番号8のポジションへ入った。ハリルホジッチ監督が言うところの“タクティクス・チョイス”である。
2点目を許さないために、数多くの予防線を張り巡らせたのだ。その代償として、浅野拓磨の出場は10分以内に限られ、所属クラブで好調の齋藤学はイラク戦に続いてウォーミングアップだけで試合を終えた。
ディフェンスに体力を費やす時間が長くなった後半は、クロスボールに飛び込む選手が2人だけというシーンもあった。高精度のクロスがピンポイントで合わない限り、2点目など求められない。だからといって、テクニカルエリアのハリルホジッチ監督が不満を表すことはなかった。ここまでリアリストに徹した采配だったのだから、勝点1を持ち帰るのも当然だと思えてくる。