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松井秀喜が語る2020年、その先の未来。
世界に伝えたい「日本のスポーツ文化」。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2016/10/11 12:10
サンフランシスコで野球教室を開いた時の松井。様々なイベントを通して、今でもアメリカとの交流は続いている。
「とにかく野球に触れて、好きになってもらいたい」
――松井さんは日米両方で、子供たちに向けた野球教室などを開催されていますが、その中で異文化交流のような場はありますか。また、子供たちがお互いの国の文化について、質問してくるようなことはありますか。
「それは、子供たちがどう感じるかだと思います。僕はとにかく野球に触れ合って、野球を好きになってもらいたい。そのためにやっていますし、自分に縁があった場所の子供たちとやっているので、自分は(異文化交流は)そんなに意識していないんですけど、子供たちが、いい意味でそういうものを感じてくれていたら、嬉しいなと思います。
質問は、野球に関してはありますよね。特に野球の日米の違いというのは質問されますね」
――日米のスタジアムの違いはありますか。
「これは僕が選手としての野球場しか経験していないので、そこに限った話になりますけど、やはり、芝生の上で、土の上でできるというのは選手としては嬉しいです。その辺はかなり違いますよね。それと、スタジアムの作りとして、お客さんが近いのでお客さんの立場からしてもいいんじゃないかなと思いますね」
日本が持つスポーツの一番の魅力は“礼儀”。
――アメリカはスポーツビジネスが盛んだと言われます。スポーツにおけるビジネスの側面で日米の違いを感じたことはありますか。
「細かい仕組みとしてはわからないので、アメリカがいい、日本がいいという比較は僕の中でもないです。
ただ、日本も、アメリカもそういう部分は球団によって違いますよね。日本の文化にあったもの、アメリカの文化にあったものがありますから。日本ではいい例としては、ベイスターズも、カープもあれだけお客さんが入っていますよね。球団の努力というのもやはりあったんじゃないでしょうか」
――フォーラムには世界各国からスポーツ担当大臣が集まり、日本でのスポーツの価値について議論をします。武道、体育、部活動と日本特有の文化がある中で、松井さんも小さな頃から野球、柔道に取り組んでこられました。日本が持つスポーツの魅力はどんなものだと思いますか。
「一番いいのは礼儀だと思います。礼儀を小さい頃から教え込まれて、徹底されるというのは非常にいいこと。それと紙一重、表裏一体かもしれないですけど、指導者の立場が強すぎたり、上下関係があったりとか、悪い面でそういう部分が出やすいのかもしれませんけど、そのあたりはまた別の問題として。
日本人として、挨拶とか、礼儀とか、そういうものをスポーツを通じて身につけることは、非常に素晴らしい日本スポーツの精神性の一部なんじゃないかなと思いますけどね」