サムライブルーの原材料BACK NUMBER
日本の司令塔候補・大島僚太に聞く。
磨いた技術は「柔」、心の中は「剛」。
posted2016/10/02 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
柔よく剛を制す。
大島僚太が好きな言葉である。中学、高校時代に「プロでやっていくためには、これしかない」と胸に刻んだ原材料。
身長168cmと小柄な体を活かして攻撃ではスルスルと相手をくぐり抜け、守備では相手のボールをかすめ取る。淡々と、飄々とやってのける。
真摯に取り組んできたこだわりの「柔」が、成長のサイクルを加速させてきた。
年間順位で首位を走る川崎フロンターレでチームの中核を担い、8月のリオ五輪ではグループリーグ突破はできなかったものの、全7得点中3つのアシストをマークするなど株をさらに上げた。ヴァイッド・ハリルホジッチが先のUAE戦でいきなり先発起用に踏み切ったのも、それに値するだけの信頼があったからにほかならない。A代表デビュー戦が、重圧のしかかる最終予選の初戦。結果的に2失点に絡み、敗れた悔しさとほろ苦さが残ったとはいえ、堂々とタクトをふるおうとした姿にはむしろ希望と期待を感じさせた。
10月の対イラク、対オーストラリア2連戦でもハリルジャパンに選出された国内で最も“旬な男”の今に迫る――。
川崎でやっているようなプレーをなくすのは良くない。
――UAE戦は、これまでフロンターレでやっている自分のプレーを出していこうという感覚だったのでしょうか。
「狭いところでも入っていくフロンターレでやっているようなプレーをなくすのは自分でも良くないとは思っていましたし、自分がやれる限られたことを全力でという考えでした。そこを監督に評価されて選んでもらったと思うので。ただ、自分の色を出しつつも、代表のやり方で合わせなきゃいけない部分もあります。そこを一発目の試合でうまくやれていなかったという悔しさはあります」
――酒井宏樹選手へのパスを奪われたことがきっかけで直接FKを与えて、失点につながってしまいました。しかしその後、消極的なプレーなどなかったように見えましたが。
「失点してから、ボールを蹴るのにちょっと足がつかないなっていう感覚にはなりましたけど、心臓がバクバクするとかそういうことは一切なかったですね。ハセ(長谷部誠)さんに自由にやっていいよと言われていたので、どんどん前に行かせてもらいました」