パラリンピックPRESSBACK NUMBER
競技力向上、技術開発、資金力……。
日本が直面したパラ五輪の急成長。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/09/21 17:00
今回のリオ・パラリンピックでは200以上の世界新記録が生まれた。4年後のホスト国である日本は、進化する競技力を直視しただろうか。
「長水路の屋内プールを、もっと使えるように……」
例えば競泳である。
オリンピック選手の場合、たいがいのスイミングクラブは拠点となるプールを持ち、選手はそこで日々、練習することができる。「明日はここ、あさってはそこ」とプールを転々とすることはない。
パラリンピックでは異なる。有力選手が少なからずいるスイミングクラブでも、決まった練習場所がなく、その都度プールを借りながら、数カ所で練習していたりする。
銀2、銅2の計4つのメダルを獲得した木村敬一を指導する野口智博コーチは、「必ずしも環境だけではない」と語りつつ、課題をあげる。
「長水路の屋内プールを、もっと使えるようになれば。また、どうしても施設の優先順位があるし、(オリンピックの)ジュニアの強化を、ということでどかないといけないこともありました」
そしてこう加える。
「来週からそういう施設を作ってほしいですね。既存のものでも、速やかに」
選手1人あたり年間約147万円の自己負担をしている。
8月には、日本パラリンピアンズ協会が、2014年のソチ、リオの日本代表選手、コーチら計248人を対象に実施し、175人からの回答によるアンケートの結果を公表した。その1つとして、21.6%の選手が施設利用を断られる、条件付きで認められた経験があると回答している。理由は、施設に傷がつく、危険などであった。日本代表であっても、およそ5人に1人は施設利用を断られてたことがあるという件も、練習環境を想起させる。
競技力と切り離すことができないことに、活動資金もある。
前出の調査では、選手1人あたり平均して年間約147万円の自己負担をしていたことが明らかになっている。'12年にも同種の調査を行なっているが、そのときは平均144万円だったから、3万円増加したことになる。
リオでも、いくつか経済的な負担の話は聞いた。例えばボッチャは今年になってから改善されたものの、海外遠征や用具代など、自己負担の割合が大きかったという。競技介助者も必要な選手もいるから、その分の費用ものしかかっていた。