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メダルから音が鳴り、施設が充実。
パラ五輪を充実させたリオの人々。
posted2016/09/22 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
どの選手の表情も、幸せそうだった。うれしそうに、かみしめるように、揺さぶっていた。
リオデジャネイロ・パラリンピックでは、リオ大会ならではの印象的な場面がしばしば観られた。表彰台に上がった選手が、耳元でメダルを振って耳を傾けたのである。たくさんの選手が耳を傾けては、笑顔を浮かべた。
「選手村に帰った後も音を聞くとうれしくて、ずっと鳴らしています。すごく落ち着きます」
リオデジャネイロ・パラリンピック柔道女子57kg級で銅メダルを獲得した廣瀬順子の言葉が象徴的だ。
リオ大会でのメダルは、これまでの大会にはない工夫がなされていた。
「RIO 2016 Paralympic Games」と点字の入ったメダルの中には、小さな金属球が入っている。振ることで、その金属球によって音が鳴る仕組みになっていたのだ。
メダルの色によって、音は異なっている。金メダルは28、銀メダルは20、銅メダルは16個、入っている球の数を変えることで、音色を変えている。
音が鳴るメダルは、これまで存在しなかった。
点字はこれまでもあった。でも、音が鳴る仕組みはなかった。
メダルのデザインチームがどのようなメダルがよいかを議論しているさなか、デザイナーのクラウディア・ガンボアが音を出すという案を出したのが、誕生のきっかけだったという。即座にチャレンジを決めると、数カ月をかけて完成にこぎつけた。
大会を前にメダルの仕様はアナウンスされていたが、いざ開幕して獲得した選手は、メダルを振ると音が鳴り、金銀銅で異なる音が鳴ることを実感とともに広めていった。
表彰台で、あるいは表彰式を終えて引き上げていく途中で、選手がメダルを振りながら耳を傾けて歩いている。それはリオ大会の風景となった。
9月18日、リオデジャネイロ・パラリンピックは幕を閉じた。
オリンピック、パラリンピックの開催を前に、治安をはじめいくつもの懸念材料が浮上していた。心配されたような出来事が、パラリンピックの期間中に実際に起きたのも事実だ。