パラリンピックPRESSBACK NUMBER
競技力向上、技術開発、資金力……。
日本が直面したパラ五輪の急成長。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/09/21 17:00
今回のリオ・パラリンピックでは200以上の世界新記録が生まれた。4年後のホスト国である日本は、進化する競技力を直視しただろうか。
「交通費が出て、家計に優しくなりました」
今回、出場権を得られなかったシッティングバレーボール女子の場合も、国内合宿、海外の大会に行くときなどの交通費、宿泊費はすべて自己負担だった。しかもほぼ毎週、合宿を行なって強化してきたから、負担額は大きかった。
最近こそ、協賛企業の支援などで変化しつつある。北京パラリンピックで主将を務め、ロンドンにも出場した金木絵美も、笑顔でこう語った。
「交通費など出るようになって、家計に優しくなりました」
ただ、長年にわたって選手それぞれがやりくりし、競技に打ち込んできたことには変わりはない。そして協会そのものも、トップに立つ会長が私財をつぎこむなどして運営してきたように、競技団体そのものに資金がない現状がある。
五輪との最も大きな違いは「一般の人の関心」。
アンケートではオリンピック選手との違いで感じることという項目もあった。
選手で最も多かったのは、「一般の人の関心」(40.5%)、「競技環境」(36.0%)、「競技団体の組織力や経済力」(33.3%)。一方でコーチ・スタッフの回答では「競技環境」(51.6%)、「競技団体の組織力や経済力」(46.9%)、「一般の人の関心」(39.1%)。順位は異なっても、3つの項目が上位であることに変わりはない。
日々の練習環境、指導体制の充実、支援スタッフ、技術開発、合宿、国際大会参加――競技力向上の大きな部分を占める基盤の整備が、今後の鍵となる。
そしてトップレベルのみでなく、広く裾野から取り組める環境を整えられるかどうかは、2020年に限定せず、その後も見据えた課題である。