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アイスホッケー日本代表、平昌を逃す。
守備優先の戦略に潜む大いなる矛盾。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2016/09/12 07:00
平昌五輪最終予選で3戦全敗した直後のアイスホッケー男子日本代表。全試合で得点1という試合内容を、果たしてどう考えるか……。
相手の攻撃を凌ぐだけでは勝利は覚束ない。
極端な比較になるが、0-1で負けたチームより、10-11でも勝ったチームの方が「ディフェンスは機能した」と言えると思うのだ。
オーストリアは、ドイツに0-6、ラトビアに1-8と日本以上に大敗している。しかし、そのオーストリアに日本は0-3と敗れているのだ。
この結果は、低い点数に抑えたからと言って、それが必ずしも勝利に近づいているわけではないことを証明している。
日本は決定力不足を嘆きながら、しかし、シュート数は3試合とも相手より圧倒的に少ない。ドイツ戦にいたっては、相手の51本に対し、日本は13本にとどまった。
その点、オーストリアはドイツ戦でも、ドイツ31本、オーストリア25本と、シュート数ではほぼ互角に渡り合った。確かにセーブ率という見方をすれば、日本が上だ。しかし、実際に観戦していると、常にゴールの匂いがするオーストリアの方が、うまくはまれば今度はドイツに勝てるのではないかという期待を持てた。
五輪に行きたければ方向転換するしかない。
素人の見立てかもしれないが、日本の思想は、考えれば考えるほど、遠回りしているような、もっといえば、間違ったバスに乗っているのではないかという気がしてくる。
決定力不足の要因として、ヘッドコーチのグレッグ・トムソンは「個々のスキルレベルの低さ」を挙げる。であれば普通に考えたら、少なくとも相手よりたくさんシュートを打つ戦い方を目指すべきではないか。試合でシュートを打たずにスキルが上がるとは、どうしても思えないのだ。
日本が求めるディフェンス・ファーストという方向性は、「善戦行き」のバスであっても、「メダル行き」ではない気がする。
今度ドイツと対戦したならば、0-5を0-1にしようとするのではなく、10-0で負けてもいいから10-11で上回ることができるようなチーム改革が必要なのではないか。
守備力を誇り、得点力不足を嘆く――。
この矛盾から脱却しない限り、これから先、同じ38年が待っているような気がしてならなかった。