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アイスホッケー日本代表、平昌を逃す。
守備優先の戦略に潜む大いなる矛盾。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2016/09/12 07:00
平昌五輪最終予選で3戦全敗した直後のアイスホッケー男子日本代表。全試合で得点1という試合内容を、果たしてどう考えるか……。
またしても、扉は開かなかった。
9月1日から4日までラトビアで開催された平昌(ピョンチャン)冬季五輪最終予選で、アイスホッケー日本代表は3戦全敗し、五輪出場を逃した。
スコアは、それぞれドイツに0-5、ラトビアに1-3、オーストリアに0-3だった。
これで自力での五輪出場(1998年の長野五輪は開催国枠として出場)は、38年遠ざかることになった。
肉体的コンタクトのある「ゴール型」の男子団体競技において、日本代表は、総じて世界レベルから取り残されている。
ハンドボールは28年、バスケットボールは40年、ホッケーは48年、五輪出場がない。そのどん底から抜け出したのは、この夏32年振りに五輪出場を決めた水球くらいである。
日本代表の戦略はボタンを掛け違えている。
「ディフェンス・ファースト」を掲げるアイスホッケー日本代表の各選手は、今大会の全敗を振り返り、こう前を向いた。
「ディフェンスは世界でも通用することがわかった」
そして、決まって「ただ……」と、決定力不足を口にした。3試合、計180分間で日本が奪った得点はわずか1。
選手によっては、得た自信よりも、失った自信の方が大きいようにも映った。
アメフトや野球など攻守が完全に切り替わるスポーツなら「ディフェンスは通じた」という言い方は成立すると思う。しかし、攻守が一体となっているゴール型ゲームにおいて「ディフェンスは通じた」という表現は、聞いていてどうにもしっくりこなかった。
しかもアイスホッケーは、狭いコートで、ものすごいスピードで試合が動く。また、ボールに相当するパックを扱うのは手や足といった体の一部ではなく、スティックという道具だ。道具を繰り、かつ氷上でパス回しをしようにも、どうしても不安定になる。したがって、サッカーのように守って守って、一本のカウンターで得点し逃げ切るといった戦術は馴染まない。
アイスホッケーにおいてディフェンスを強化するということは、あくまで、失点をできる限り少なく、かつ点も取れる守備隊形を確立することではないだろうか。