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「曲げるスイープ対応」と情報共有。
カーリング世界銀を支えた日本の絆。

posted2016/04/03 10:30

 
「曲げるスイープ対応」と情報共有。カーリング世界銀を支えた日本の絆。<Number Web> photograph by AFLO

左から、代表コーチのリンド・ジェームス(カナダ)、本橋麻里、吉田夕梨花、鈴木夕湖、吉田知那美、藤澤五月。

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 3月29日、成田空港第2ターミナルの到着口Aに姿を見せると、フラッシュと歓声が起きた。2階の通路にも、ずらりと人が並ぶ。多くの人を前にした5人の選手はただ笑顔だった。快挙にふさわしい光景だった。

 3月下旬に行なわれた世界女子カーリング選手権で、日本代表のロコ・ソラーレ北見(LS北見)が銀メダルを獲得した。世界選手権、オリンピックを通じて、日本カーリング界初のメダルである。

 一次リーグ最終日には強豪のスコットランド、カナダに完勝。準決勝のロシア戦では、相手も容易に隙を見せない行き詰る展開の中、我慢強く戦い、延長の末7-5。一次リーグ、プレーオフで敗れ3度目の対戦となった決勝のスイスに対しても正確なショットで渡り合い、最後まで食い下がった。アイスの読みとショットの精度の高さは、これまでの代表チームにはないものだった。銀メダルにふさわしい、レベルの高いゲームを披露してみせた。

「いつもどおり私たちらしいカーリングということにしっかりと集中して取り組みました」

 サードの吉田知那美は大会をこう振り返る。

「曲げるスイープ」の発明でカーリング界に革命が。

 私たちらしいカーリングとは、どのようなものであったか。何が正確なショットを生んだか。

 カーリング界にとって今シーズンは、「革命」と呼ぶ人がいるくらい大きな変化が起き、揺れたシーズンでもあった。それは、スイープで起こった。

 簡単に説明すれば、スイープには投げたストーンをまっすぐ進ませ距離を伸ばす意味があった。ところが毛のブラシを用いてある方向からスイープすると、ストーンを大きく曲げられることが発見された。その後、ブラシの新開発なども進み、スイープの仕方も変わり、競技性に与えた影響があまりに大きかったことから、議論を巻き起こすことになった。

 シーズン終盤になっても状況は落ち着かず、2月の日本選手権では使用できた種類のブラシが、世界選手権では規制されたりしていた。

【次ページ】 ショット間での緻密な情報共有が支えた正確性。

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