ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「日本のために遼とゴルフをしたい」
松山英樹が直に口説いたW杯出場。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/09/09 11:00
2013年の全米ゴルフ選手権練習ラウンドでの一コマ。石川と松山の関係性は一言で表現しきれないものだ。
「自分たちはお互いの不安を取り除いていける」
ダブルスは両者の特徴をはっきりさせることは、戦略を練る上で重要に違いない。
ただ、松山がいま描くゲームプランは少し違う。
「でも、だからといって“どう戦うべき”っていうのは考えてないんです。特別互いの良いところを探していくわけでもない。普通にやれば、いい争いができる。不安がないとは言わないけど、自分たちはお互いの不安を取り除いていけるはず」
それぞれに特徴があるが、両者はやはり国内屈指のオールラウンダー。細工はいらない。余計な飾り気は必要ないという見立てだ。
ふたりは学生時代に日の丸を背負った経験、プロになってから世界選抜の一員に入った経験があるが、日本代表として戦う上で大切なことは「あまり考えないようにすること」だと松山は言う。
「代表することを思うあまり、普段のプレーができなくなったら仕方がない。試合で普段の力を出すために練習している。土壇場では“そういう気持ち”が働く可能性もあるけれど、そこに行くまでに、気持ちが先走ってはいけない」
「遼と組んで優勝したら、ゴルフの見方が変わる」
勝つために必要な普段通りの自分――団体戦でそれを体現するために、最も適するであろうパートナーこそが、いまの松山にとっては石川だった。
しかしである。松山には今回の選出で表現したかった、ひとつの“思惑”もあった。それは本能的に感じたもの、いや、世間で比較されてきた当事者だからこそ、味わってきた感情に由来するかもしれない。
「なんて言ったらいいかな、言葉は難しいけれど……。遼と組んで、もし優勝したら、日本でゴルフの見方が変わると思うんですよ。どの選手と組んで勝っても、それはすごいこと。ただ、遼とやるということが、もっと違う力を日本ゴルフ界に与えるかもしれない。それは、大きかったかな」
米国での実績では上を行ったいまでも、松山にとって石川の存在はいち選手に留まらない。そう素直に口にし、行動に移したのは、松山が強さの原動力のひとつである謙虚さを保っているからだ。