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「日本のために遼とゴルフをしたい」
松山英樹が直に口説いたW杯出場。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/09/09 11:00
2013年の全米ゴルフ選手権練習ラウンドでの一コマ。石川と松山の関係性は一言で表現しきれないものだ。
パートナーとして、真っ先に浮かんだ石川遼。
一緒に戦おう――真摯にそう願った松山の本気度の表れだった。
今年のワールドカップは団体戦、ダブルスによるスコアで勝敗を争う。4日間のうち、1つのボールを交互に打つフォアサム形式と、それぞれが自分のボールを打って良い方のスコアを採用するフォアボール形式でのプレーが2日ずつ。個人戦では見られないコンビネーションが必要なことは言うまでもない。
大会の実施要項が発表された1月、松山は団体戦のフォーマットに興味を持ち、出場に意欲的になった。同時に、パートナーとして真っ先に名前が浮かんだのが石川だったという。
「そのときは(石川が)ケガをする前だったんで心配はなかった。でもツアーから離れたあとも、もっと早く戻ってくると思っていたのに長引いて……。他の選手は、日本ツアーで賞金王争いがあるから難しいということもあった。でも、遼はアメリカでやっているから」
石川の復帰後快進撃に「本来の力だと思う」。
ワールドカップの同週には日本ツアー・カシオワールドオープンが開催される。石川の所属契約先の主催試合とあって、タッグ結成の話は立ち消えになる可能性もあったため「出場を認めてくれたカシオさんには僕も感謝したい」と松山は言った。
最も懸念されるべき相棒の回復具合についても、ここへ来て望ましい方向に進んでいる。石川は8月の復帰2戦目から2週間で優勝&2位という成績を残した。「普通にスゴい。半年離れていて、7月に復帰したときはうまくいかなかったけれど、1カ月で仕上げてきた。本来、彼が持っている力だと思う」と安堵したところだ。
待望の、というべきだろうか。日本の男子ゴルフを引っ張ってきた両者が、タッグを組んでどう化学反応を起こすか、という点で興味は沸く。
既に世界トップクラスと称されるようになって久しい松山のショットに、石川は早いうちから畏敬の念すら抱いてきた。
「常にピンに向かっていく英樹のショット……正直言って、一生かかっても追いつけるか分からない」
一方で松山が、石川の具体的な長所を上げることもさほど難しいことではない。
「ショートゲームや100ヤード以内の距離もうまい。それにティショットが曲がっても、ラフからグリーンにうまく乗せる技術が僕には足りないと思う」