松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹は「ベスト・ジャパニーズ」?
米国人記者が口にした興味深い評価。
posted2016/08/31 07:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
あれは先々週のウインダム選手権のときだった。米ツアーの、いわゆるストリーミング放送のカメラが上位を走る松山英樹の姿を捉え続け、アナウンサーとコメンテーターが賑やかに会話を続けていた。
「ベスト・ジャパニーズ・プレーヤーって誰でしょうねえ?」
「ベスト? そうだねえ、マツヤマは米ツアーでは通算2勝だけど、シゲキ・マルヤマ(丸山茂樹)は日本人最多の3勝だよね」
そう言ったかと思えば、次はこんなやり取りになった。
「イサオ・アオキは勝利数はマツヤマより少ない1勝だけど、アオキはホール・オブ・フェーマー(殿堂入り選手)だよね」
「なるほど。そうですよね。マツヤマはまだ24歳。殿堂入りには早すぎる」
結局、この2人の会話が結論に至ることはついになく、だから余計に「ベスト・ジャパニーズは誰?」という問いかけが耳について離れなくなった。
日本人選手が注目されるのは、本当に稀有だった。
しかし、考えてみれば、こうして日本人選手が他選手たちを差し置いて画面に映し出され、たとえ数分間であれ、ベスト・ジャパニーズは誰かというテーマが取り沙汰されることだけでも「すごいなあ」と感じてしまう。
ストリーミングというIT技術の賜物が米ツアーにお目見えしたのは、ここ数年のことで、以前はモニターで目にするものと言えば、テレビカメラで捉えられたものだけ。そして、その対象に日本人選手が上がることは、本当に本当に、びっくりするほど稀有だった。
優勝争いの真っ只中にあるとき、あるいは優勝したときは、さすがに大映しになった。だが、それは年間百数十回を越える試合のラウンドの中のほんの数回にすぎなかった。ちょっと上位に上がってきたという程度では日本人選手にカメラが向けられることはほとんどなく、画面に映し出されるのはずっと下位でも人気の高い米国人選手ばかり。「ベスト・ジャパニーズは誰?」なんて会話が持ち上がるはずもなかった。