松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

ゴルフはいつだってギャップだらけ。
松山英樹のスコアと満足感の差。

posted2016/09/14 17:00

 
ゴルフはいつだってギャップだらけ。松山英樹のスコアと満足感の差。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

背後には「ULTIMATE(究極)」の看板。松山英樹の求めるゴルフに言葉をつけるとしたら、そんな言葉になるのだろうか。

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph by

Sonoko Funakoshi

「What's wrong with him ?(彼は何が気に入らないんだろうねえ?)」

 米ツアーのプレーオフ第2戦のドイツ銀行選手権でも第3戦のBMW選手権でも、松山英樹の周囲には、そんなフレーズが溢れていた。TV中継のアナリスト、ストリーミング放送の奔放な語り手、メディア、ファン、いろんな人々が松山のプレーを眺めながら、しばしば首を傾げた。

 ドライバーを振り、勢いよく飛び出した彼のボールが悠々とフェアウェイを捉える。そのフェアウェイからピンそばへピタリ。「オー!」、「グレート!」、「ゴー、ヒデーキ!」そのたびに割れるような拍手喝さいが巻き起こる。

 だが、次々にフェアウェイやグリーンを捉えても、松山の表情は険しい。まるで大きなミスショットをおかしたみたいなリアクション。すると、たちまち彼の周囲から「えっ? 彼は何が気に入らないんだろうね?」というフレーズが聞こえてくる。ここ2週間は、そんな日々が続いていた。

絶賛されたショットでも、基準は常に自分の理想。

「フェアウェイに行ってるけど、芯に当たってない」

「当たって曲がったら、腹が立つ」

「当たらないなら当たらないで、腹が立つ」

 そう、松山の理想はとても高い。米ツアーのストリーミング放送の奔放な語り手は「マツヤマのスタンダードは、それはそれは高いからねえ」と、ピンそばに付けながらも悔しそうな反応を見せた松山に皮肉を込めた“解説”をしていたけれど、現状に甘んじてしまったら、それ以上の進歩や前進はなくなってしまう。

 飽くなき向上心こそが成長をもたらす。誰もが「グレート!」と絶賛するショットを放っても、自身が求める理想に達していなければ、それは不満が残る。そんな理想と現実のギャップに松山は苛立っていた。

 そして、松山が戦っていたギャップは理想と現実の狭間だけではなかった。予選落ちしたプレーオフ第1戦のバークレイズでは「ショットもパットも、どっちも悪い」と肩を落としていたが、ドイツ銀行選手権では徐々にパットが向上。BMW選手権でも「パットはいい感じ」と好調さを維持。だが、ショットのほうは「ティショットが良くなるかなと思ったら、今度はアイアンが良くなくなって、何かをしたら何かが悪くなる」。そんな自身のゲームを構成する要素どうしのギャップにも彼は苛立っていた。

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