スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
最強国相手で見えた可能性と限界。
日本女子バスケ代表は絶対強くなる。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJMPA
posted2016/08/19 08:00
渡嘉敷来夢は2015年からアメリカプロリーグに挑戦し、新人ベスト5にも選ばれた。センターかフォワードか、悩ましい選択だ。
先発選手が長時間プレーせざるを得ない選手層。
もうひとつ、アメリカ戦で露呈したのは、選手層の厚みとそのクオリティである。『ガーディアン紙』の報道に、すべてが言い表されていた。
「後半はアメリカが日本に対してアジャストし、豊かな才能を発揮してギアをセカンドに上げたが、日本はそれを持ち合わせていなかった」
アメリカは後半に入ると、バスケットボールのクオリティを上げた。選手のプレータイムを美しくマネージメントし、最長はダイアナ・トーラシ(私が女性ではいちばん好きなバスケット選手)が27分で、各選手に持ち味を発揮できる時間を与え、2ケタ得点をマークした選手は7人に及んだ。
日本は渡嘉敷が36分、栗原29分、吉田28分、本川25分と先発選手にプレータイムが集中し、ベンチからの貢献は高田真希、町田瑠唯、近藤楓らに限られ、しかも彼女たちとて必ずしも効果的な働きをしたわけではない。
世界の趨勢を見る限り、先発の5人にプラス、3人程度のベンチプレーヤーで戦う時代ではなく、9人、10人の選手をうまく使いながらチームをマネージメントしていくのが主流になっている。
日本を見ると、次の東京オリンピックで中心選手となるべき世代、宮沢夕貴、長岡萌映子といった選手には、満足なプレータイムが与えられていなかった。監督の信頼を勝ち得られなかったのかもしれない。
平均身長がもっとも低い日本の準々決勝は快挙。
しかし、オリンピックのような短期間の大会を戦う場合、層の厚さを構築し、セカンド・ユニット(ベンチから出場する5人のユニット)を充実させなければ、なかなか勝ち抜けないこともまた事実だ。
平均身長がもっとも低い日本が準々決勝に進出したのは、快挙である。
しかしオリンピックは、残酷なまでに現実をさらけ出す。日本は大きな課題を突きつけられた恰好であるが、この難題は実に解決しがいのあるものだと思う。
4年後、マネージメント体制が整えば(ラグビーのエディー・ジャパンのように)、日本の女子バスケには大きなチャンスがあると私は信じる。