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M・ジョーダン、C・アンソニーら、
社会問題に声をあげる新たな“うねり”。
posted2016/08/08 11:30
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
7月下旬、マイケル・ジョーダンがひとつの声明を発表したことが、大きなニュースとなって世界に広まった。
「これ以上黙っていられない」と書かれたその声明(ESPN管轄の『Undefeated』のウェブサイトに掲載)でジョーダンは、最近アメリカ各地で警察官による黒人市民の射殺事件が連続して起きていること、そしてそれに対する復讐として警官を射殺する事件が起きていることに心を痛めていることを記した。
銃犯罪により父を失ったことや、長い間、彼や家族が警官(ボディガード)の警護を受けてきたことにも触れ、「アメリカ人がひとつにまとまり、平和的な対話と教育によって、建設的な変化が成し遂げられることを願って、声をあげることにした」と綴っている。また、この問題を解決するために2つの基金に100万ドルずつの寄付をすることも発表した。
現役時代は社会的発言を控えてきたジョーダン。
ジョーダンは現役の頃から、社会的、政治的な話題を公の場で語ることを避けてきた人だった。
スポンサーに気を使うと同時に、自分の影響力をスポーツの外にまで広めたくないと考えてのことだった。現役時代はまだSNSが普及する前だったという時代的な背景もある。それだけに、今回、ジョーダンが人種間の分断や、銃犯罪などの社会的問題に声をあげたことは大きなニュースとなった。そして、今でもジョーダンの影響力が大きいことを示した。
ジョーダンの声明を受けて、カーメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス)は、こう言った。
「すばらしいことだ。そして、ついに、彼があれだけのことを言ってくれた、とも思う。何といっても、彼は僕らを代表する存在だ。強い影響力を持つアフリカ系アメリカ人だ。その彼が、今のような時に声をあげてくれた。それは、彼のためにとっても大きなことだ。お金だけの問題ではないけれど、単に言葉だけでなく、自分の身銭を切ったというのもよかった。これ以上ない、すばらしいタイミングだった」