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M・ジョーダン、C・アンソニーら、
社会問題に声をあげる新たな“うねり”。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2016/08/08 11:30
ESPYに出演した時の4人。左からカーメロ・アンソニー、クリス・ポール、ドウェイン・ウェイド、レブロン・ジェームズ。
アンソニーがインスタグラムで投げかけた声明。
実のところ、ジョーダンの声明をはじめ、アスリートたちが社会的な問題に声をあげるうねりを作り出したのは、7月8日にアンソニーがインスタグラムに投稿した文章だった。
ジョーダンの声明ほど大きなニュースにはならなかったが、同じぐらい、いや、それ以上に重要な声明だった。
アンソニーによると、投稿の前の日、彼は1日中、警官による黒人市民の銃撃事件やダラスで警官が狙撃された事件のニュースを見ていたのだという。いったんは就寝したものの、夜中の3時に目が覚め、眠れなくなり、文章を打ち始めた。
「頭に浮かんだ言葉をそのまま文章にした」とアンソニー。その文章でアンソニーは、アスリート仲間たちに向けて「政治的な話題を語ることを恐れて黙って見ているのではなく、変化を求めて行動に移そう」と説いた。
メッセージと共に投稿された写真は、1967年に行われた『モハメド・アリ・サミット』と呼ばれる集会後の会見での写真だった。モハメド・アリ(1964年にカシアス・クレイから改名)のベトナム戦争徴兵拒否を支援する黒人トップアスリートたちの集まりで、NBAからはビル・ラッセルやカリーム・アブドゥル=ジャバー(当時はルー・アルシンダー)が参加していた。アスリートたちが政治的、社会的な発言や行動をしていた時代の象徴だった。
「この問題はデモ行進では解決しない」
アンソニーは、以前から銃犯罪や人種差別の問題に高い意識を持っていた。去年、故郷バルティモアで黒人青年フレディ・グレイが警官に逮捕され、護送中に負った負傷が原因で命を落とすと、一般市民とともに抗議デモの行進にも参加した。
そんな経験をもとに、インスタグラムの投稿で、アンソニーはこうも言っていた。
「僕も試みてみたことがあるが、この問題はデモ行進では解決しない。僕らはみんなSNSでの投稿もしてきたけれど、それでも問題は解決しない。11人の警官を撃ち、5人を殺しても解決することではない」