岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
リオ五輪のラグビー、日本の相手は?
岩渕健輔が各国の弱点を徹底解析。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/08/03 17:00
オーストラリア守備陣を切り裂く福岡堅樹。五輪でメダルという目標へ準備は整った。
グラウンドを広く使う展開に持ち込ませないために。
一方で、ディフェンスにおいてはニュージーランドが得意とする展開、すなわちグラウンドを広く使いながら、足の速いバックス陣が大外から突破を図るようなパターンに持ち込ませないことが重要になります。
そのためにもマイボールをキープして、自分たちがディフェンスに回る時間を減らしていかなければなりませんが、一旦、ボールを奪われた際には積極的に前に出て低く、強く、速いタックルで、攻撃の芽を摘む必要があります。
低く、強く、速いタックルは、日本ラグビー界が誇る最大の武器になっています。去年のRWCと同じように、この武器を駆使できるかどうかも、ニュージーランド戦では問われてきます。
イギリス戦は「ミスマッチ」を巡る戦いになる。
2試合目であたるイギリスの場合は、フォワードの選手とバックスの選手が、比較的はっきり別れているという特徴を持っています。
たとえばニュージーランドなどは個の能力が平均して高いため、フォワード、バックスを問わずにスピードがありますが、イギリスの場合は、フォワードの選手は体のサイズとパワーで優る代わりに、スピードはありません。逆にバックスの選手はスピードはありますが、体のサイズはそれほど大きくないので、分業型のチーム構成になっています。
そこを突くのが日本代表の戦い方になります。
具体的に言うならば、攻撃においては「ミスマッチ」(フォワードとバックスが向き合う状況)と呼ばれる状況を作り出していくのが狙いになります。パワーとサイズがある代わりに、あまりスピードがない敵のフォワードが、足の速い日本人のバックスに対応しなければならない局面に持ち込み、スピードで振り切っていくのがトライを狙うパターンになります。
とはいえ試合の流れの中では、日本も同じようなミスマッチの状況を作られる危険性が出てきます。ディフェンスに回った場合には、体格に優る敵のフォワードと、小柄な日本人のバックスが対峙する場面も必ず出てくるからです。
ラグビーには、タックルを受けた選手が起点となって相手を引きつけながら、味方にパスを繋いでいく「オフロード」と呼ばれるプレーがあります。特に7人制ラグビーの場合は、15人制よりもグラウンド上に広大なスペースがありますので、イギリスのフォワードが「オフロード」を多用し、バックス陣にボールを回し始めると、日本は不利な状況に追い込まれてしまいます。
「オフロード」を防ぐためには、敵のフォワードがボールを持った瞬間に、組織的なタックルですぐに相手を倒さなければなりません。仮にミスマッチの状況にある場合には、味方がすぐにサポートに回り、ミスマッチの状況を作られる前にボールを奪いかえすことが求められます。
簡単に言うならば、攻撃ではミスマッチの状況を最大現に活用する、守備ではミスマッチの状況を相手に活用させないことが、イギリスを攻略するためのヒントになります。