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植田直通「外へ出たい」の意味は?
五輪を価値ある通過点にする決意。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2016/07/27 11:30
チームはすでにブラジル入りし、直前キャンプの真っ最中。植田直通と遠藤航を中心とした守備こそ、このチームの心臓だ。
最終ラインに加わった塩谷、藤春よりも。
リオ五輪代表の手倉森誠監督は、「メダルを目ざす」と公言してきた。目標は大きいが、戦いに臨む姿勢は現実的だ。攻撃力で相手を圧倒するとか、撃ち合いを挑むといった考えは持たない。僅差の攻防をしぶとく勝ち取っていくイメージを描く。オーバーエイジを加えても変わらない、このチームのスタンスだ。
だとすれば、守備の安定は欠かせない。
先制点を与えるとゲーム展開が難しくなるのは、5月のトゥーロン国際が教えている。ビハインドをはね除ける逞しさは必要だが、守備が安定することでピッチ内に落ち着きが生まれ、指揮官のゲームプランにも幅が出てくる。
U-23日本代表からリオ五輪代表へ変わったことで、最終ラインには2人のオーバーエイジが加わった。ディフェンスのポジションをマルチにこなす塩谷司、左サイドバックのスペシャリスト藤春廣輝である。日本代表経験を持つふたりは頼もしい存在だが、チームコンセプトの理解ではU-23世代が先をいく。オーバーエイジに寄りかかるのではなく、興梠慎三を含む3人をうまく取り込んでいくことが、リオ五輪での命運を分けるだろう。
リオ五輪出場を引き寄せたセンターバックのトリオ──奈良竜樹はケガでメンバーから漏れてしまい、岩波拓也はケガから回復して18人に滑り込んだ状態である。
チームのコンセプトを身体に刻み、コンディションに不安のない植田は、ディフェンスのリーダー格にならなければいけない。
「外へ出たい」という発言の真意はどこに。
現地ブラジルでのトレーニングでも、主力とみなされるチームで塩谷とセンターバックのコンビを組んでいる。ディフェンスの安定感を手にするために、背番号5の奮闘は欠かせないのだ。
トゥーロン国際で「外へ出たい」と話した植田は、「それは海外のクラブへ移籍したいということ?」との質問を受けた。彼は落ち着いた口調で、「まあ、色々です」と話した。
所属する鹿島アントラーズを離れたいわけではないだろう。盲目的に海外へ憧れているわけでもないはずだ。「より高いレベルで自分を磨きたい」というプロとしての原初的欲求に従うと、「外へ」という選択肢が頭のなかで浮かんできたに違いない。
リオ五輪でチームと自身が「上」へ行くことで、「外」への道は開かれる。いまはただ、「チームが勝つことに自分のすべてを注ぐ」というこれまでどおりの信念が、植田を突き動かしている。
ナイジェリアとのグループリーグ第1戦まで、あと8日──。