野球のぼせもんBACK NUMBER
「そろそろ勝ちに行く」で首位奪取。
ソフトバンク二軍にも常勝哲学あり。
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/07/20 11:00

ドラフト1位ルーキー高橋純平らと笑顔でナインを迎え入れる水上二軍監督。育成と勝利のバランスが常勝の若鷹軍団を作り上げている。
昨年も13連勝などで7.5ゲーム差をひっくり返した。
それにしても、だ。
思えば、昨シーズンも同じ展開だった。7月上旬時点でやはり最大7.5ゲーム差引き離されていたのを、8月19日には首位浮上し、そのまま最後まで逃げ切ったのだ。そして大型連勝もあった。夏場に13連勝。これはウエスタン26年ぶりのタイ記録だった。その快記録に、今年もまた並ぼうとしているのだから、やはりホークス二軍は強い。
いや、強いのはわかっている。
若鷹の真のすごさは、2年連続で大逆転劇を起こしていることだ。
「そろそろ勝ちに行きますよ」
強烈に印象に残っている言葉だ。それは昨年の今頃、快進撃が始まる直前だった。水上善雄二軍監督がにやりと笑い、そう言ったのだ。
そして、現実に勝ってみせた。
水上監督が明かした「負けず嫌い」というキーワード。
昨年、今年と続けて大逆転劇を見せられては、まさか指揮官のシナリオ通りにシーズンが進んでいるのではないかと、そんな考えすら頭を過ってしまう。
「いやいや、選手の頑張りですよ。私も驚いています」
水上二軍監督は眼鏡の奥で目を細める。だが、ただの偶然ではない。そこには、確かな信念に基づいたチーム作りがある。
指揮官が明かす。
「昨年の前半戦は、特に育成を主眼において選手起用も行い、戦術やサインをベンチからあまり出さずに選手それぞれに考えさせてプレーしてもらう手法をとりました。得るものは大きかったと思います。しかし、負けが込んで1位とかなりの差をつけられたときに、私のプロ野球人としての本能である『負けず嫌い』がふつふつと沸いてきたんです。選手たちには常々『やられたらやり返せ。負けたままでそれが出来ないのはプロではない』と言い伝えています。それで、昨年の後半戦は本当の意味で勝つために、前半から手堅く走者を進めたり、ベテラン選手を試合の始めから使ったりしました。そこで流れが変わったんだと思います」