プレミアリーグの時間BACK NUMBER
EUに続きEURO“離脱”で悪夢の1週間。
イングランドは生まれ変われるのか?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/07/01 11:10
采配術に疑問の声が続出したホジソン監督は敗退後に退任を表明した。
ルーニーは中盤で輝きを取り戻したかに見えたが……。
一時的な戦力ダウンはあるにしても、ファンはユース出身選手のレギュラー化促進を歓迎するだろう。5月のトゥーロン国際大会では、サウスゲート監督率いるイングランドU-21代表が22年ぶりの優勝を果たしているが、チームの動力源となったルーベン・ロフタス=チーク、ルイス・ベイカー、ナサニエル・チャロバという中盤のキーマンは、チェルシーが所有権を持つ若手だ。ただチェルシーはユースから1軍に上がれないことで有名でもある。
かねてよりイングランドでは代表強化のために国内トップリーグの状況改善こそが必要と指摘されている。プレミア各クラブのレギュラーを占める母国選手の割合が約3割でしかないことが大きな理由だ。
そんな状況の中で、アイスランド戦では今大会最大の番狂わせを食らった。『タイムズ』紙で選手全員が「0点評価」を受けたと同時に、イングランドに真のワールドクラスがいないことを思い知らされた敗戦だったと言ってもよい。そして「少なくともルーニーがいる」という認識はピッチ上で否定された。
EURO開幕前にも、今や30歳のベテランFWに先発の資格を問う声は聞かれたが、代表落ちはナンセンスと見られていた。筆者も、ルーニーがいるといないとでは対戦相手に与える威圧感が違うと思っていた。当人はコンディションの良さを訴えてもおり、開幕後もグループステージではMF起用で評価を高めていた。
デル・アリら若手の成長促進も阻害する結果に。
ところが、自らが決めたPKによるリードを覆されて前半を終え、ビッグプレーヤーとして違いを見せなければならなかったアイスランド戦後半、ルーニーは攻撃を組み立てるセンターハーフの要人としても、精神面で周囲を支える経験豊富なチームリーダーとしても力不足だった。パスやコントロールを誤ってポゼッションを無駄にする姿は、大物どころか大一番でのプレッシャーに脆い選手の代表例のようでさえあった。
ルーニー自身は、試合後にも「呼ばれれば代表でプレーし続けたい」と発言している。しかし、その存在がデル・アリに適所と思われるトップ下ではない位置での出場を強いたり、ロス・バークリーから中盤での出場機会を奪ったりというように、代表復興の期待を背負う若手の成長促進を妨げるのであれば、今大会を最後に代表から身を引くべきだろう。