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1stステージ最終節、湘南・曹監督の心。
四季の移ろいを感じつつ、成長を知る。 

text by

曹貴裁

曹貴裁Cho Kwi-Jae

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photograph byShonan Bellmare

posted2016/06/29 10:45

1stステージ最終節、湘南・曹監督の心。四季の移ろいを感じつつ、成長を知る。<Number Web> photograph by Shonan Bellmare

ついに1stステージ最終節。目指すべきコンセプトを変えずにきたことで、チーム力も上向きになってきた!

レイソルはJクラブが目指すスタイルを確立している。

●6月23日(木)

 今週対戦するレイソルさんは監督のシモ(下平隆宏)もかつて一緒にプレーした仲間だし、スタッフも旧知の人がたくさんいる。

 武富孝介や中川寛斗のような、湘南で頑張ってくれた選手もいるから良い意味で親近感の湧くチーム。彼らは彼らのスタイルをブラッシュアップし、毎年成長してきている。今年はシモが監督になってから調子を上げてきて、今はちょっと勝点を伸ばしきれない状況だけど、非常にボールハンドリングの技術は高く、1人1人がゲームを支配するということにプライドを持っているチーム。

 一方、我々はボールを動かすこと、ボールを奪うことを同時に進行し、ハイスピードでハイテンポなサッカーを目指すというふうにやっている。

 近頃の日本では、お互いの様子を窺って、ボクシングでいうとKOパンチを狙うのではなくてクリンチで始まる試合が多い。しかし柏と湘南の試合ではお互いのスタイルが最初からぶつかり合うということが多いから、個人的にすごく楽しみな一戦。

 柏レイソルは自分が大学を卒業してから3年間お世話になったチームだし、今でも柏で教わった指導者の方や地域の方、スタッフの方がいることからもすごく特別な存在であることは間違いない。ただ親近感が湧くというのは、単にノスタルジー的なものでなく、彼らがアカデミーから選手を育てて、アカデミー出身の選手がピッチに立って、その流れを外から来た選手と融合するという、まさにJクラブが目指すべきスタイルを確立しているところも含めてのこと。

 我々と志向するサッカーは違うかもしれないけど、そこに至る考え方、アカデミーのスタッフたちのこれまでの努力を含めてリスペクトしかないチーム。

 そういうチームに対して、こちらが対策に傾倒し自分たちのスタイルを出し惜しんだことで「できた、できなかった」を体験する時間が減るのはもったいないこと。

 だから今回は直球勝負で真っ向から行こうと最初から決めている。

●6月24日(金)

 今回の試合はポジティブな意味で本当にメンバー選定が難しい。

 “ウイニングチーム・ネバーチェンジ”という言葉があるけれど、僕の中ではそう思ったことはほとんどない。“ウイニングチーム・ネバーチェンジ”であればその週の練習がどうでもいい、ということにつながるような気がするからだ。

 監督の大きな仕事として、メンバーを選定しゲームプランを練ることがあるけれど、ここ最近はどの選手が出てもAプラン、Bプラン、Cプランが作れてしまう。どのプランで試合に臨んでも結果が出るのではないかと思うくらいメンバー選定が難しい状況。それくらい選手の力が上がってきて、練習の中の温度感や空気感も良い。

 みんなの「試合に勝つために自分を使ってくれよ」という思いが伝わってくるし、ライオンが獲物を狙う時のジャンプ直前のかがんでいるような独特の緊張感がある。そのおかげで充実感のある練習が今週もできた。

【次ページ】 「勝敗を超えたスペクタクルな展開」を望む。

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