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「対世界」の感覚を取り戻せるか。
男子バレー、五輪への活路はサーブ!
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2016/05/30 17:30
脚を大きく後ろに反らせて打つ柳田将洋のサーブ、アタックは息をのむほど美しい。
中国戦では一転、日本のサーブが機能しなかった。
そして、南部正司監督が開幕戦のスタメンに選んだのは柳田だった。
「去年のワールドカップで成功したサーブで押していくスタイルで、大会の突破口を開き、初戦からリズムを作りたい」という期待が込められていた。
ポジション争いのプレッシャーをはねのけて開幕戦のコートに立った柳田は、周囲が硬くなる中、自分をコントロールし、指揮官の起用に応えてチームに勢いをもたらした。
ところが一転、大会2日目の中国戦は、日本はサーブで苦しみ、セットカウント0-3で敗れた。日本の武器である柳田、石川、清水のサーブが機能せず、チーム全体で16本のミスが出て、サーブポイントはわずかに3。崩してチャンスにつなげる場面も少なかった。海外勢より高さで劣る日本は、サーブで攻めて崩さなければ勝機を見出すことは難しい。
平均身長11cmの差は、攻守に影響大。
加えて、チームとしてジャンプサーブが機能しない時の策がなかった。
もともと日本のフローターサーブは効果が少なく、中国にレセプション(サーブレシーブ)を返され、リベロをのぞくスタメンの平均身長が日本を11cm上回る201.3cmと高さのある攻撃に、リードブロック(相手のトスを見て反応するブロック)が間に合わない。かといって、昨年のワールドカップでやっていたように、データをもとにブロックを割り切って守るという指示も出なかった。
リベロの永野健は、「すべてをリードで行こうとしたけど、相手は高さがあるので(スパイクを)上から通された。もう少し割り切りも必要だったと思う。僕ら選手の中でも判断して、切り替えていけばよかった」と悔やんだ。
そして一番の課題は、被ブロックの多さだ。この日、中国に与えたブロックポイントは14本にも及んだ。難しい場面ではリバウンドを取って攻撃を立て直し、粘り強くチームで1点を取るという日本が目指すスタイルにはほど遠かった。
昨年のワールドカップでは、相手のブロックが高くても、ブロックアウトやリバウンドを取る打ち方ができていたが、V・プレミアリーグを挟んで8カ月経った今、対世界の感覚をまだ完全には取り戻せていない。