オリンピックPRESSBACK NUMBER
「対世界」の感覚を取り戻せるか。
男子バレー、五輪への活路はサーブ!
posted2016/05/30 17:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
AFLO
世界の強豪を相手に全日本の若手選手たちが躍動し、男子バレー人気に火がついた昨年のワールドカップから約8カ月。その熱を引き継いで、5月28日、リオデジャネイロ五輪世界最終予選男子大会が開幕した。
開幕前に観戦チケットはほぼ完売。初戦のベネズエラ戦は1万人収容の東京体育館が満員に埋まり、試合前から金色のスティックバルーンを打ち鳴らす音が響き渡った。
そんな中、全日本の立ち上がりは硬かった。期待を一身に集めた20歳のエース、石川祐希がブロックに捕まり、レセプション(サーブレシーブ)を崩され、重苦しい空気が漂った。
「緊張はなかったけど、いつも通りのプレーができなかった。雰囲気にのまれたようなところもあったと思います」と石川は振り返った。
主将の清水邦広も、「久々の試合でしたし、五輪最終予選というのは自分たちにとって人生をかけるぐらいの大会なので、萎縮してしまった」と言う。
打てば決まる状態の絶好調・柳田将洋。
そんな空気に風穴を開けたのは、柳田将洋だった。
「緊張というよりは、気持ちの高揚がありました。五輪最終予選という結果(五輪出場権)がかかる場である一方で、こうやってたくさんのお客さんが見にきてくれる数少ない舞台の一つなので、僕はそっちの方に引っ張られて、気持ちが高まっていました」
そう言ってのけた強心臓の23歳は、初めてのサーブが回ってくると、迷いのないスイングで相手レシーバーを崩し、ミドルブロッカー富松崇彰の連続ブロックにつなげた。
「最初から思い切り打つように監督から指示されていましたから、ポイントを取りにいくつもりで打ちました」
前衛ではしっかりと相手ブロックを見極めてキレのあるスパイクを打ち込み、打てば決まるという状態だった。
それでも日本は第1セットをデュースの末に落とし、第2セットも12-16と引き離されるが、そこから柳田が立て続けにスパイクを決めていく。相手ブロックが3枚ついても鋭いスイングで吸い込ませ、17-17と追いつくと、必死の形相で吠え、周りを鼓舞した。熱い姿とは対照的に、「相手ブロックの完成が遅い印象があったので、早めにスイングしようと思った」と頭の中は冷静だった。
そんな柳田の奮闘が、清水や石川の復調を呼び込み、セットカウント3-1の逆転勝利につながった。