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本田圭佑の目から「熱気」が消えた。
“腐ったミラン”で過ごす覚悟は? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/05/17 17:00

本田圭佑の目から「熱気」が消えた。“腐ったミラン”で過ごす覚悟は?<Number Web> photograph by AFLO

ローマ戦でも、本田はチームの誰よりも走り続けていた。しかし、明らかにその表情はこれまでとは異なっていた……。

もはや誰も走ろうとしない。例外は本田だけ。

 欧州で無類の強さを誇ったアンチェロッティ時代のOBであるブロッキは、戦術をオーナーが好む4-3-1-2へ戻し、ボールポゼッションへのこだわりとチームプレーへの献身、クラブへの忠誠を選手たちに説いた。

 ただし、横暴なオーナーによる監督交代劇を冷めた目で捉えた選手たちが、今季終了までの場つなぎ的立場にあることが明白なブロッキに、心の底から忠誠を誓うだろうか。

 仮に新任監督が未経験者ブロッキではなく、誰もが知る名将であったとしても、オーナーによる現場介入を厄介に思わない選手はまずいない。

 フロントが一部の代理人と癒着している限り、公平な競争に基づいたチーム作りなどありえないことは、移籍市場を何度も経験した選手たち自身がよく理解している。そして、初夏も近いこの時期に努力を重ねても、今さら得られるものは少ない。

 加えて、今のミランでは中国資本への身売り話が現実味を増しつつある。今日は従わざるをえないオーナーも監督も、いついなくなるか知れたものではないのだ。

 そうやって擦れた外国人のベテラン選手が数人もいれば、ロッカールームの士気は下がり、空気は淀む。将来ある若手も、容易くそのムードに影響される。

 監督が代わった後のミランでは、もはや誰も走ろうとしない。例外は、本田だけだ。

勤勉さゆえにマルチタスクを背負う羽目に。

 覇気を失ったミランは、カルピとベローナ、フロジノーネの降格3クラブ相手に勝ち点2しか奪えず、リーグ最多得点を誇る3位ローマには赤子扱いされた。

 ローマ戦では、18歳のMFロカテッリが中盤底の“レジスタ”として初先発起用されたが、若さからミスを連発。フォローするはずのMFベルトラッチもまったく頼りにならず、トップ下で先発した本田は攻撃を組み立てるどころか、中盤2人のフォローのために忙殺された。

 在籍3シーズンで4度の監督交代を経験した本田は、ようやくチームの根っこをつかんだはずのシーズンの最終戦でも、その勤勉さゆえにマルチタスクを背負う羽目になった。右に開いて、タッチライン際の相手に体をぶつけながらボールを奪い、自陣のペナルティエリアを前に相手のアタックを潰した。今季何度も見た光景だ。

 もちろん、49分や74分に訪れたゴールのチャンスは、絶対に決めるべき類のものだった。だが、周囲の選手たちはそれ以上に重症だった。

【次ページ】 これまでとは違う、冷めた目が気になった。

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本田圭佑
ACミラン

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