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本田圭佑の目から「熱気」が消えた。
“腐ったミラン”で過ごす覚悟は? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/05/17 17:00

本田圭佑の目から「熱気」が消えた。“腐ったミラン”で過ごす覚悟は?<Number Web> photograph by AFLO

ローマ戦でも、本田はチームの誰よりも走り続けていた。しかし、明らかにその表情はこれまでとは異なっていた……。

これまでとは違う、冷めた目が気になった。

 サン・シーロでの今季最終戦に臨んだ本田には、フルシーズンを戦った肉体的疲弊とは明らかに別の類の憔悴があった。

 膝に手を置き、息を整えようとする。こめかみをしたたる汗が、まるで溶けた鉛のように重そうに見えた。

 試合終了の笛が鳴った。

 シーズンの戦いを労う拍手の代わりに、覇気のないミランへ投げかけられたのは、ミラニスタたちの怒りのこもったブーイングだった。

 試合後、ミックスゾーンへ早々に姿を現した本田は、報道陣を一瞥することもなく通り過ぎた。これまでとはどこかちがう、冷めた目が気になった。

今のミランは腐り切っている。

 本田には、まだ今季のラストゲームが残っている。

 タイトルと来季EL出場権の望みをかけた、21日のコッパ・イタリア決勝戦だ。

 しかし、セリエA5連覇を果たした絶対王者ユベントスとの決戦を前に、ミランはチームとしての体を失いつつある。

「おまえらにプライドはないのか? キンタマはついてんのか?!」

 ローマ戦で全く戦う素振りを見せなかったチームに、指揮官ブロッキは試合直後から怒り心頭だった。「選手たちが自らについてきていないことを裏切りと受け取った新米監督は試合翌日の練習場で選手たちを1時間にわたって叱責した」と16日付の地元紙が報じた。

 選手たちは押しなべて沈黙したままだったというが、それが従順な証であるとは限らないし、そもそもロッカールームの内情が外部に漏れ出ること自体、チームの末期的症状だ。

 誤解を恐れずにいえば、今のミランは腐り切っている。

 ローマ戦の終盤、ミランのベンチ前で両チームの選手たちが小競り合いを起こしたとき、ミランの10番は仲裁に入るわけでもなく、遠く離れたピッチの真ん中で腰に手を当て、一人じっと静観していた。

【次ページ】 残された現役の数年間をここで過ごす覚悟はあるか。

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本田圭佑
ACミラン

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