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優秀な防御率と6~7回の大量失点。
ラミレス監督の葛藤が見える継投策。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/05/05 09:00
5月1日、6-1で迎えた7回に山口俊からザガースキーに継投するも3点を奪われ、引き継いだ須田もタイムリーを浴び、5点差からの逆転負けを喫した。
理想と現実の葛藤の産物。
シーズンが開幕すると、ことあるごとにこうも言っていた。
「先発には7回まで投げてもらうことを期待している」
8回を三上朋也、9回を山崎康晃が締めるという勝利の方程式を念頭に置いて、7回までは先発に任せたい。そうした理想的な展開を一度でも多く重ねることが、選手に自信をつけさせ、チームの強さにつながる。そんな思いが、6~7回に先発投手を続投させるという判断につながっているのだろう。
しかし現実には、チームを勝たせなければならない。打線の援護が少ない中ではなおさら走者一人に繊細な注意を払わねばならず、「終盤の序盤」に選手とベンチを襲う重圧は大きい。結果、信念に基づいて続投させた先発を諦め、走者を背負った場面での継投に踏み切らざるをえなくなる。
QS率の高さと6~7回の失点の多さという2つのデータは、理想を追いながら現実にも対処せねばならない指揮官の葛藤の産物に見えるのだ。
低迷が続く“弱者”がその座を脱するには、所属する選手の意識から変えなくてはならないという論説はよく耳にする。また一方では、勝利という結果ほど選手の意識を変える良薬はない。
現実の1勝を獲りにいくために、ラミレス監督が非情の采配を揮えるかどうか。DeNA浮上のカギは、まずそこにあるのではないだろうか。