野球善哉BACK NUMBER
安打は減っても、実は出塁率は向上。
秋山翔吾が目指す「1番打者」の姿。
posted2016/05/05 08:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Shigeki Yamamoto
安打数だけで比較すれば、昨季ほどではない。
昨季、プロ野球のシーズン最多安打記録を樹立した西武・秋山翔吾のことだ。
開幕からの1カ月(4月30日まで)で28試合すべてに出場し、109打数32安打、打率.294。40安打をマークして3、4月の月間MVPを獲得した昨年からするとややおとなしいスタートに見える。
ただ、それは「秋山=安打」という印象をもった場合のことだ。
現時点での彼の成績を紐解いていくと、今季の方が、ある成績が向上しているのだ。
「去年は700近くの打席に立って64だった。少なくはないけど、物足りなさは残りました。現在のところはいいペースかなとは思います」
本人がそう話しているのは四死球数、そして出塁率のことだ。
昨年は3、4月の25試合で8四死球、出塁率が.417だったのが、今季は28試合28四死球、出塁率.435の数字をマークしているのである。連続試合四球記録のタイ記録で話題になった柳田悠岐より、秋山の四球数が上回った時期もあったほどだ。
昨年は後続の打者に「任せていた」部分。
そして、この数字は偶然の産物ではない。
秋山は昨季の最多安打を振り返る中で、その記録に自信をつかみつつも、バッターとしてはまだ成長すべき課題を挙げていた。
「達成した記録というのは、早いカウントから積極的に行けた結果でした。それは後ろに、栗山(巧)さんという技術も経験もある方がいて、その後ろに浅村(栄斗)という打点王を取ったことがある素晴らしいバッターがいたからこそ。僕が早いカウントで打っていって凡打になっても、後ろの打者が何とかしてくれるだろうと信頼していました。僕の勝手な信頼ではあったんですけど、その中で達成できた記録でした。
でも2016年は、それだけではいけないと思っています。積極性を失ってはいけませんが、後ろのバッターに任せていた部分を自分でこなせるようにしたいです。そのうえで結果が出たら最高だなと。それがたとえ200安打という数字にならなくても、大きな意味があると思っています」