リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
ビジネス界がシメオネに大注目!
長期的視点を「捨てる」効果とは。
posted2016/04/28 10:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
AFLO
ヨーロッパで歴代3位となる「公式戦39戦無敗」を打ち立て、スペイン記録を27年ぶりに塗り替えたチームが、その後の5試合で4敗するなんて一体誰が想像できよう。
おかげで、昨年11月のクラシコをバルサが圧勝した瞬間に「決まった」とされたリーガ優勝の行方はわからなくなってきた。
この稿を書いている時点で、首位は依然バルサ。2位がアトレティコで3位はマドリーのままだが、バルサとアトレティコの間にポイント差はなく、アトレティコとマドリーは1ポイント差でしかない。つまり、残り3節のスプリント、一度でもつまずいたら即脱落なのだ。
2連覇が当然と思われていたバルサは、ひときわ重いプレッシャーをきっと感じている。一方で、唯一ホームゲームが2つあるアトレティコは有利だけれど、上位で頑張るセルタとの対戦を最終節に残している。マドリーもバルサを封じ込めたエウセビオ率いるレアル・ソシエダと敵地で戦わねばならない。加えてアトレティコとマドリーにはCLもある。
最終局面で、これほど熱くなるリーガは久しぶりだ。3チームの心身両面のコンディション作りから試合当日の戦いぶりまで全てをつぶさに観察したら、大いに楽しめるのは間違いなかろう。
シメオネの「短期的視点」は中小企業にも有効?
さて、かようにバルサの連敗で生じたこの盛り上がりだが、カギを握っていたのは実はアトレティコかもしれない。というのも3者の中で一番波の小さいシーズンを送り、マドリーには1勝1分けで勝ち越し、バルサには(リーガでは2敗したものの)CLベスト8止まりという精神的ダメージを与えたからだ。
したがってシメオネの株はまたもや上がっており、先日は経営戦略の視点から彼とアトレティコを研究・分析した論文がウェブマガジン『ハーバード・デウスト・ビジネスレビュー』に掲載された。キーワードはシメオネの方針である「一試合ずつ進んで行く」――即ち、常に長期的視点を持つビッグクラブとは対照的な短期的視点であり、執筆した大学教授たちはこれが大企業と争う中小企業にとっても有効だと説いている。