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ビジネス界がシメオネに大注目!
長期的視点を「捨てる」効果とは。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2016/04/28 10:30
マラガ戦での妨害行為で、スタンド観戦を命じられたシメオネ。シーズン中のベンチ復帰はかなうだろうか。
ビッグクラブと異なる中小クラブの戦略性。
たとえば人材確保について。才能を花に喩えるなら、7分咲きから満開の選手は即戦力かつ「しばらく咲いている」という点で効率的なチーム強化に適しているが、値段も高い。しかし懐が暖かいビッグクラブは、長期的戦略のもと、資産価値をも考慮して彼らを買うことができる。結果としてビッグクラブの戦力は一段上となり、リーグ内のヒエラルキーは保たれる。企業に関しても同様で、有能な者は大手が金銭的好条件をもって集めてしまう。
そこで中小クラブ/企業には別の手立てが必要となる。
それが短期的戦略というわけだ。
シメオネは若手への投資をやめて「いま」に注力。
アトレティコも以前はバルサやマドリーと張り合い、数年間の活躍が見込める若きタレントの獲得に大金を費やしていた。だがシメオネが来てからは、自分たちの立場をわきまえ、「今シーズン」だけを念頭に置くようになった。
先を考えることを止めたので債務を作ることも避け、補強は前年活躍した選手を売るところからスタート。そうして資金を作って、「いま必要な選手」を資産価値を気にすることなく買っていくのだ。中小企業ならば業務経験豊富なベテランに目をやるよう、執筆者は勧めている。その後チームを適切なコーチングによって団結させ、総資本回転率を上げて大企業より効率的に利益を出していく。目指すは一試合/一年度ずつの勝利である。
問題があるとしたらコーチングだ。
コーチとなる者は、新加入組に戦術/業務内容を理解・実行させるだけでなく、クラブ/会社への帰属意識と責任感を短期間に持たせねばならない。共通の目標を明確にし、互いを助け合う姿勢を植えつけることもしなければならない。そのためにはチーム内の自由なコミュニケーションを確立しなければならないし、練習/仕事においては柔軟さと忍耐強さも求められる。