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派手に喜ぶ選手と、落ち着く長谷部。
多様性こそがブンデス残留を導く?
posted2016/04/26 10:40
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Getty Images
「次の試合に勝ってこそ、可能性は見えてくる。『フランクフルトは降格するだろう』とか言ってくるヤツらもいるが、オレは信じているぞ!」
決戦を前に、週の最初の練習が始まるにあたり、コバチ監督は選手にうったえかけた。
4月24日のマインツ戦はフランクフルトにとって、どうしても勝ち点3が必要なゲームだった。
コバチ監督が就任してからの5試合の成績は1勝4敗。新監督は守備の整備を最優先にしたが、残留争いのライバルであるダルムシュタット、アウクスブルク、ホッフェンハイムがそろって勝ち点を積み上げ、フランクフルトは窮地に陥っていた。マインツとのホームゲームを勝てないようでは、チームに1部残留をあきらめるムードが漂っていたとしても不思議ではない。選手たちも危機感を感じてか、決起集会ともいうべき食事会も開いていた――。
ラッキーにも見えるゴールでの勝利は「大きい」。
しかし、6位マインツとの試合では苦しい立ち上がりを迎えた。18分には直接FKをブロジンスキに叩き込まれ、あっさりと先制を許してしまう。
それでも、前半28分にフランクフルトのFKから歓喜は生まれた。流れたクロスを拾ったベン・ハティラが、バランスを崩しながらもボールをゴール前に送りこみ、これをルスが蹴り込んで同点に追いついた。
そして84分、ベン・ハティラのクロスがマインツのDFベルにあたり、ゴールに吸い込まれて逆転に成功。
チームの2点目は、フスティの落としを長谷部誠がダイレクトで左サイドバックのオツィカに展開したところから始まった。「あの点に関して言えば、かなりの運やツキはありましたけど」と謙遜した長谷部は、試合後に次のように話している。
「ああやって真ん中で、ワンタッチでサイドに、というような展開ができれば、サイドの選手も時間を作れると思うし、早い攻めができる」
フランクフルトはそのまま逃げ切り、コバチ監督の下で2勝目をあげた。
「幸運といいますか……。勝ち方としてはキレイな勝ち方ではないですけど、今シーズン、こういうツキのある勝ち方というのを全くしていなかったので。そういう意味では、勝てたのは大きいかなと思います」