フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
宇野昌磨、フィギュア史に名を刻む。
史上初4回転フリップ成功の意義。
posted2016/04/25 14:50
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
4月22日、ワシントン州スポケーンでフィギュアスケートに新たな記録が生まれた。
18歳の宇野昌磨が、公式試合で史上初となる4フリップを成功させたのである。
ISU認定、USFSA(米国フィギュアスケート連盟)主催の新たなチームイベント「コーセー・チームチャレンジカップ」でのことだった。
それまで公式試合で承認されてきた4回転は、6種類のジャンプのうち、トウループ、サルコウ、ルッツの3種類のみだった(4回転ループは羽生結弦がアイスショーなどで何度か披露しているが、公式試合に入れてきたことはまだない)。
フリップはアクセル、ルッツの次に難易度が高いジャンプとされていて、高橋大輔が2010年トリノ世界選手権で両足で着氷したことがあるが、回転不足の判定だった。
この大会は、ISU承認ながら扱いはオープン大会(プロアマ混合)というややこしい立場にあり、ISUの正式な記録にこの4フリップを登録してもらうべく、日本スケート連盟がISUに要請中であるという。もしそれが認可されれば、今回の宇野の快挙により、これで6種類中4種類のジャンプの4回転が認定されたことになる(*その後、ISU技術委員会は宇野の4フリップの成功判定が公式なものであることを確認した)。
宇野昌磨の名前は試合で史上初の4フリップを降りた選手として、フィギュアスケート史に永遠に刻まれることになるだろう。
初開催のチームチャレンジカップで生まれた偉業。
このチームチャレンジカップは、アジア、北米、ヨーロッパのチームに分かれ、男女シングルそれぞれ3人、ペアとアイスダンスは2組ずつで競う団体競技で、今回が初開催である。
同じチームイベントでも、日本で2年ごとに行われる国別対抗戦とも、五輪の団体戦とも、参加選手の人数など形態が少々異なっている。初日のSPのスコアはフリーに持ち越さず、フリーの総合点はカップル競技とシングルの選手の合計で出すなど、独自のシステムで行われた。
日本はアジアチームのメンバーとして、宮原知子、本郷理華、宇野昌磨、ペアの須藤澄玲&フランシス・ブードロ=オデが参戦。他のメンバーは中国からはペアとアイスダンスが1組ずつ、韓国のアイスダンス組などが参加。男子シングルはボーヤン・ジンとデニス・テンもメンバーだった。
シングル選手たちは精一杯健闘したものの、カップル競技の点差をカバーしきれずにアジアチームは3位に終わった。
だがこの舞台は宇野にとって、ボストン世界選手権の雪辱を果たす、絶好の機会となったのである。