松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹にした4年前と同じ質問。
「何がどう悔しい」の答えは――。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2016/04/12 11:00
4日間、何度かあった危機を乗り越えて71、72、72、73で回った松山英樹。この崩れなさは経験のなせる業だ。
最終日、スピースが2度池に入れる大失速。
前半、4番、5番、6番で4つスコアを落とした松山は、それでも「何が起こるかわからない」と自分で自分に言い聞かせ、必死に踏み止まり、粘っていた。
8番のバーディーから立ち直り、9番は惜しくもバーディー逃しのパーに留まったが、10番でもバーディーを奪い、11番はうまくピンチを切り抜けてのパー。
もしかしたら奇跡のような何かが起こるかもしれないのだから、いや、きっと起こるものなのだから、首位との差が7打も8打も開いても、それでも諦めずに頑張り続ける。
彼の表情、彼の全身から、そんな意志が溢れ出していた。
そして奇跡は起こった。松山が13番のフェアウエイで第2打を打とうと構えたその瞬間、後方の12番から聞こえてきた「オー!」という溜め息のどよめき。
「ジョーダンが池に入れたとわかった」
物音には滅多に反応しない松山が、このときばかりは仕切り直した。独走していたスピースが大きく崩れれば、それは松山にとってのチャンス到来。しかもスピースは2度も続けて池に落とし、パー3で「7」を叩く大失速。それは松山にとっては千載一遇の、それこそ奇跡のような出来事だった。
松山が13番でイーグル、14番でバーディーを奪えば、後退したスピースや上昇してきたウィレットらとともに、松山が終盤で優勝争いに絡むことが可能になる。
しかし、松山は13番の2メートルのイーグルパットも14番の2メートル半のバーディーパットも沈めることができなかった。
「13番が入っていたら、もうちょっと追いつくチャンスもあったのかな。まあ、12番、13番、14番。入らなかったのは悔しかった」
気が付けば「それが悔しかった」と言っていた。
気が付けば、「それが悔しかった」と松山は言っていた。少し前に「わからない。これから考える」と言った「悔しい」の内容が少しずつ整理され始め、「悔しいこと」が1つ出たら、次々に出てきた。
3日目の15番から狂い始めたパットのストロークを「修正できなかったのは事実」。1番のセカンド、6番のティショットも悔しかったものの1つ。
「18番もフェアウエイの一番いいところから、しかも結構、距離も出ていて、短い番手で打てるのに……」
それなのに、そこからの第2打はグリーンの右へ反れ、バンカー際のラフへ。思わずクラブを叩き付けそうになった一瞬は、今週の我慢強かった松山がたった一度だけ、ついに怒りを露わにした瞬間だった。
「ああいうミスをしているようでは、うーん、(今後はもっと)いろいろ考えて取り組まないといけないなと感じた」