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長友の一発退場は相手FWに狙われた?
インテルの来季CL出場は風前の灯に。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/04/05 10:40
退場の判定に、長友は納得できない表情を見せた。インテルにとっても、ただの退場以上の痛手となった。
ユーベ相手に3点差を追いついた後期型インテル。
彼らを軸にした後期型インテルは、王者ユベントスすら飲み込んだ。
3月2日、サンシーロに足を運んだインテリスタたちは、信じられない光景を見た。その夜、コッパ・イタリア準決勝2ndレグに臨んだインテルが、絶対不利とされていた下馬評を覆し、王者ユーベを文字通り蹂躙したからだ。
1stレグを3-0で先勝していたユーベの驕りを突いて、ブロゾビッチとペリシッチが次々にゴールネットを揺らした。ブロゾビッチがチーム3点目のPKを決めると、サンシーロは興奮の坩堝と化した。
その試合でキャプテンマークを巻いたユーベDFボヌッチは、試合後「自分がユーベに入団して以来最も無様な試合」と苦々しく吐き捨てた。チーム改造後のインテルのプレーは、それほど圧倒的だったのだ。
だが、2戦合計3-3のイーブンスコアとした後、延長戦を経ても決着はつかず、PK戦の末にインテルは敗れた。
王者を圧倒し、得失点も五分。なのに、トーナメントから去らねばならなかった不条理が、インテルにさらなるモチベーションを呼び戻した。
「冬の間、チームは不調に悩まされていたけれど、あの試合で皆が吹っ切れた。ここから先は相手がどこであれ、白星を狙い続けるしかないんだ」
インテルの中盤を掌握したブロゾビッチが言うように、3位ローマ追撃の機運は高まった。
長友が積み重ねた6年の守備経験は重い。
パレルモとボローニャに連勝し、敵地オリンピコに乗り込んだ30節の直接対決では、DF長友佑都もまた気を吐いた。チームの上位に入る57回のボールタッチ数を記録し、エジプト代表FWサラーをマークしながら、決定的なクリアを何度も見せた。
しかし“無尽蔵”という言葉が最高に似合った長友のイタリア1年目を思い起こせば、試合時間が残り15分を切ってからの爆発的なスプリント力は、すっかり影を潜めたといっていい。
ただし、DFとして長友が積み重ねたセリエA6シーズン分の守備経験は決して軽くない。今でもチーム髄一のスタミナを持ち、左右を問わずに攻守のプレー内容を計算できる長友は、指揮官マンチーニにとってサイドバックのファーストチョイスなのだ。