オフサイド・トリップBACK NUMBER
ハリルが原口元気を重用する3要因。
ユーティリティ、若さ、そして……。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/04/02 11:00
「無難なプレーが必要なら自分が使われる理由がない」。自らそう言い切った原口元気のボランチ起用、今後も見られるか。
ハリル就任まで、原口は2年以上代表戦に出場していない。
そこで著者はシンガポール戦後の記者会見で、ハリルホジッチ監督に直接その真意を問い質した。質問項目は2つ。原口にトップ下としての適性を見出しているのか否か、そしてボランチに起用した理由である。ハリルホジッチ監督は、トップ下については言及しなかったが、ボランチでの起用に関しては、次のような説明をしている。
「(システムを4-4-2に)変更したのは、得点を取りに行くためだった。ヘディングが上手い大迫と岡崎を前線に置き、クロスをもっと入れさせようとした。
原口には、シュートを打つためにボールを運んでほしかったし、遠目からでもシュートを狙っていこうという話もした。しかし、そういうプレーはあまり多くなかった。ゴール手前16メートル付近に行った時には、少し慌てていたようにも思う」
コメントからわかるように、この時の原口はさほどのインパクトを与えていない。だが、監督の評価は揺るがなかった。これは国内組で臨んだ東アジアカップを除けば、直近の8試合すべてで先発もしくは交代出場していることが如実に示している。
アギーレ監督時代、原口がベンチに入った回数は0である。ザッケローニ監督時代でも、試合に出場したのは2013年の7月28日、東アジアアップの韓国戦まで遡らなければならない。原口は、ハリルホジッチ体制の誕生とともに一気に出場機会が増えた選手の1人なのだ。
これほど多くのポジションを任された選手はいない。
ではハリルホジッチ監督は、原口のどこをそれほど買っているのか。理由としては3つの要素が挙げられるように思う。
1つ目はユーティリティープレイヤーとしての潜在能力だ。先に述べたように、原口は昨年6月の時点で、4-2-3-1の左サイドとトップ下、オーソドックスな4-4-2のボランチを経験している。今回、アフガニスタン戦ではさらにダイヤモンドの4-4-2で右のサイドハーフとして起用された。現代表の攻撃的な選手の中で、これほど多くのポジションを任された選手は他にいない。
そしてシリア戦においてボランチとして起用されたのも、同じ文脈の延長線上で捉えられる。
ハリルホジッチ監督にとって初の公式戦、そしてW杯ロシア大会2次予選の初戦シンガポール戦は、今回のシリア戦に負けず劣らず重要な一戦だったはずだ。その試合で、0-0という緊迫した状況で原口はピッチに投入された。それは、原口のユーティリティープレイヤーとしての資質を認めており、チームの攻撃を活性化するカンフル剤としての役割を期待していたからだと考えられる。