オフサイド・トリップBACK NUMBER
ハリルが原口元気を重用する3要因。
ユーティリティ、若さ、そして……。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/04/02 11:00
「無難なプレーが必要なら自分が使われる理由がない」。自らそう言い切った原口元気のボランチ起用、今後も見られるか。
20代前半は今回23選手中3人しかいなかった。
これはハリルホジッチ監督が原口を重用している、2つ目の理由にも重なる。
ハリルホジッチ監督は、日本代表の指揮官に着任して以来、いくつかのスローガンを掲げている。具体的には「縦方向への意識の強さ」、「攻守の切り替えの速さ」、「運動量の豊富さ」、「相手に競り負けない『Duel』の強さ」といったテーマである。原口がそれらの要素を満たしていることは、改めて繰り返すまでもないことだ。
3つ目の理由としては、世代交代を促進する効果が挙げられる。
日本代表はいまだに香川や本田、岡崎、長谷部、長友といった選手たちを主軸にしている。シリア戦でベンチ入りしたメンバーに限っても、23名の平均年齢は27.2歳。20代前半(24歳以下)の選手は、宇佐美貴史(23歳)、昌子源(23歳)、原口(24歳)の3名しかいない。
大久保嘉人や遠藤保仁の処遇からもわかるように、ハリルホジッチ監督は、代表の世代交代を意識的に促進してきた。怪我さえなければ武藤嘉紀(23歳)は当然ベンチ入りしていたはずだし、柴崎(23歳)、遠藤航(23歳)、浅野拓磨(21歳)などの若手を起用する機会も窺っているだろう。しかし残念ながら現時点では、思ったほど世代交代は進んでいない。その意味でも原口たちは、貴重な存在になっている。
普通に考えればボランチは山口になるが……。
とはいえ最終予選でも、原口がボランチとして起用されるような場面が見られるか否かは、まったくの未知数だ。
普通に考えれば、長谷部のパートナーとしては山口を選ぶのが定石で、柴崎や遠藤、谷口彰悟らが続く形になる。
原口自身、ボランチでコンスタントに起用されるようになるためには、かなりの経験とノウハウを蓄積していかなければならない。それはシリア戦後にハリルホジッチ監督や原口本人が口にしたコメントからも明らかだ。
ちなみにハリルホジッチ監督は、原口をボランチに起用した理由と、ボランチとしての評価を尋ねた著者に対して、こう述べている。
「(ボランチに起用したのは)フィジカルやテクニックの面で適応しているからだ。タクティクスはまだ足りない。ただし、かなり良いオプションだと思う」