サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
A代表よりU-23の方がハリルの好み?
データで見る「速い攻め」の差とは。
posted2016/04/08 10:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Asami Enomoto
日本代表はロシアW杯2次予選でアフガニスタンに5-0、シリアにも5-0で快勝し、最終予選進出を決めた。2試合で10得点無失点はハリルホジッチ監督にとって最良の結果と言えるが、では、監督が希望する戦術通りの戦い方が出来ているのだろうか。
ボールを高い位置で奪い、速く攻める。
これは、ハリルホジッチ監督が就任当初から一貫して言い続けていることだ。一見単純そうだが、対戦相手との力関係の影響も受けるし、選手間の意志疎通や連動性などが求められるので、実現は簡単ではない。試合でトライ&エラーを繰り返しながら浸透させている途中だが、実は今、その基本戦術を実践し、結果を出し続けているチームが存在する。
手倉森誠監督が率いる、U-23日本代表である。本来であればA代表こそが監督のサッカーを体現するようになるはずだが、なぜこのような現象が起こっているのだろうか。
前方へパスを入れる比率に大きな差が。
(1)は、A代表(ロシアW杯2次予選、3月の2試合を除く試合)とU-23日本代表(リオ五輪最終予選6試合)のボランチのパスの比較である。
パスの前方比率とは、単純にボランチが前線に縦パスを入れている数字だ。おもしろいのは、U-23代表の遠藤航(52.8%)と原川力(40.5%)らのパスの前方比率が、A代表の長谷部誠(33.6%)や山口蛍(37.8%)よりも非常に高いことだ。
遠藤は、プレッシャーが厳しい中盤でプレーする時はシンプルに早くプレーすることを心がけており、ゲームメイクをするよりも「ゴールに直結するパス」を重視している。それを実証しているのが、遠藤のワンタッチ比率(58.1%)であり、パスの受け手(2)のデータである。FW久保裕也に縦パスを入れることで攻撃のスイッチを入れる、あるいはゴールに直結するパスを入れて決定的なチャンスを作る。余計な手間と時間をかけずにゴールを奪うという、遠藤の狙い通りのプレーができていたことがデータからうかがえる。
長谷部は、横パスが多い(61.7%)。パスする相手も1位が右MF本田圭佑、右SB酒井宏樹とつづく。これはA代表の多くの攻撃が本田を経由して行なわれていることを示している。右サイドで作って左サイドの選手かトップの選手がフィニッシュする、あるいはサイドからパスを回して攻めるという流れが出来ているということだ。