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五輪金メダリストがトランプ氏を語る。
米国大統領選とスケートの奇妙な縁。

posted2016/03/23 12:10

 
五輪金メダリストがトランプ氏を語る。米国大統領選とスケートの奇妙な縁。<Number Web> photograph by Akiko Tamura

「ウォールマンリンク」で開催されたチャリティ・イベントでのトランプ氏。スケーターではサラ・ヒューズ、チャーリー・ホワイト、ジョニー・ウイアー、ドロシー・ハミルらが出席した。

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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Akiko Tamura

 相変わらずの問題発言で物議を醸し続けている米国大統領候補の1人、ドナルド・トランプ氏。

 日本でもすっかり話題の人となった彼だが、実は彼がアメリカで名前を売った背景には、フィギュアスケートが大きく関わっていたことを知っている人は、日本ではあまりいないだろう。

 今から30年以上前の1980年のこと。ニューヨークはセントラルパークにある冬場のみの屋外リンク「ウォールマンリンク」が一時閉鎖され、ニューヨーク市公園管理局が2年の歳月をかけて改装することになった。1949年にオープンしたこのリンク、1980年当時はもうボロボロでかなりひどい状態だったという。

 だがそれから6年の歳月が経過し、1200万ドルの予算がつぎ込まれた後になっても、まだ改装が終わる気配はなかった。それどころか、「最初からやり直し」するため、あと3年かかるとニューヨーク市が発表したとき、お役所仕事にしびれを切らせて名乗りをあげたのがドナルド・トランプだった。

なぜトランプはスケートリンクに目を向けたのか?

 ニューヨーク市クイーンズ出身のトランプは、まだ大学在学中に父親のフレッド・トランプの不動産開発事業に参加し、野心的に大きなプロジェクトを次々とものにして事業を拡大させていった若手のデベロッパーだった。

 彼が「ウォールマンリンク」の改装を自費で請け負うとニューヨーク市に申し出た1986年当時、彼はすでに億万長者となっていた。そして五番街に建設した金ぴかの「トランプタワー」(1983年)は、新たなニューヨークの観光名所となっていたのだ。そのトランプが、いったい何がきっかけでスケートリンクに目を向けたのだろうか。

トランプとスケートをつなげた人物。

「きっかけは、当時のトランプの妻だったイヴァナ・トランプでした」

 そう明かしてくれたのは、元五輪チャンピオン、ディック・バトン氏である。

 1948年、1952年と二度の五輪で金メダリストに輝き、現在でもフィギュアスケート男子で史上最年少五輪チャンピオンの記録を持つバトン氏。引退後は米国のテレビで長い間フィギュアスケートの名物コメンテーターとして活躍していたが、86歳になった現在は時折イベントなどに顔を出す程度である。

 そのバトン氏がマンハッタンのパークアヴェニューの自宅で、気軽に独占取材に応じてくれた。

【次ページ】 チェコスロバキアから米国に亡命したアヤ・ザーノワ。

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