フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
五輪金メダリストがトランプ氏を語る。
米国大統領選とスケートの奇妙な縁。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2016/03/23 12:10
「ウォールマンリンク」で開催されたチャリティ・イベントでのトランプ氏。スケーターではサラ・ヒューズ、チャーリー・ホワイト、ジョニー・ウイアー、ドロシー・ハミルらが出席した。
チェコスロバキアから米国に亡命したアヤ・ザーノワ。
「スキーヤーでもあったイヴァナは、アヤ・ザーノワと同じチェコスロバキア出身でアスリート同士ということで交流があったのです」とバトン氏は語り始めた。
アヤ・ザーノワとは、チェコスロバキア出身のフィギュアスケーターで、アリーナ・フルザーノワの旧名で1949年と1950年の世界タイトルを手にし、その後米国に亡命した女性である。
昨年の7月に84歳で亡くなるまで、そのエレガントで艶やかな姿を時折ニューヨークのスケートイベントで見せていた。
「私はアヤと知り合いで、彼女がイヴァナ・トランプと、ドナルド・トランプを紹介してくれました」
わずか4カ月で改装を終えたトランプの手腕。
トランプは1986年6月に市から「ウォールマンリンク」の改装を請け負うと、クリスマスまでには仕上げると宣言。そして実際には予定より2カ月早く終わらせ、しかも当初3百万ドルを予定していた改装費用を25%下回る予算でやってのけた。
バトン氏は、その当時のことをこう語る。
「私は57丁目にオフィスがあり、『ウォールマンリンク』の前を通って毎日通勤していました。だから定期的に午後にはあのリンクで滑っていた。それがいつまでたっても改装が終わらなかったんです。ニューヨーク市には、できなかったんですよ! それをドナルドは、自分ならできると宣言して、実際やってのけた。そして彼はそれをたっぷりと宣伝しました」
バトン氏の言うように、このストーリーは広く紹介され、当時の新聞はこぞってトランプの手際を賞賛した。その一方で当時のエド・コッチ市長をはじめとするニューヨーク市庁の面々は、面目を失って赤恥をかくことになった。