プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョの後任はライバル監督?
ポチェッティーノが「最適」な理由。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/03/13 10:50
トッテナムとの契約期間は5年間。しかし、急速にステップアップするポチェッティーノを引き止められるか。
既存の選手の守備意識を変えたポチェッティーノ。
前述した敵地でのマンC戦、後方からの攻撃参加は主にローズが担当し、こちらも本来は攻撃的なはずのカイル・ウォーカーは、逆サイドで抑制の利いた守りを見せていた。中盤中央では、テクニックに自信を持つムサ・デンベレが、自慢の「足下」で強引なドリブル突破やキラーパスを狙うのではなく、安定性を生み出すようになっている。いずれも監督の指示が反映されているに違いない。万能DFからボランチにコンバートされたエリック・ダイアーも、前半戦のチーム内MVPとも言える活躍で後半戦2位浮上の下地作りに貢献している。
仮にチームが、オーナーも納得のスタイルで結果も手にすることができるようになったとしても、その特性を受け継ぐ人材がチームにいなければ「レガシー」にはならない。そして現在のチェルシーには、今季末で契約が切れるジョン・テリーしか生え抜きレギュラーがいないのは周知の事実で。今季は30名を越える数の若手をレンタルで放出していることも有名だ。
アブラモビッチが私財を投じたアカデミーは、過去6年間のFAユースカップ(U-18)で4度の優勝を含む5度の決勝進出という実積を上げているのだから、オーナーが一軍昇格率の低さに不満を覚えたとしても無理はない。
補強の権限を持たずとも、チームを進化させる。
その点、ポチェッティーノは若手登用にも積極的だ。トッテナムでは22歳のハリー・ケインがエースとして完全に定着し、純粋な自家製ではないものの、19歳のデル・アリというMFも台頭した。ケインはプレミアでの2年連続20得点がほぼ確実。アリは、イングランド代表のEURO2016で、ケインと共にスタメン当確とまで言われている。今季は、ユース上がりのMFトーマス・キャロルなども、レンタル修行を終えてトッテナム一軍を経験できるようになった。
トッテナムの場合、若手起用の裏に、新スタジアム建築に着手しているクラブの厳格な予算管理があることは事実だ。補強はダニエル・リービー会長らの役員を含む5名体制で、ポチェッティーノがサウサンプトンから呼び寄せた肩書き上の補強責任者、そしてポチェッティーノ本人ももちろん含まれているが、最終権限を与えられているわけではない。
実際、就任後の過去4度の移籍市場では、前体制時代からの余剰人員整理と将来性も加味した若手の獲得が主体だった。その中で優勝候補へとチームを進化させた手腕は評価に値する。