プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョの後任はライバル監督?
ポチェッティーノが「最適」な理由。
posted2016/03/13 10:50
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
AFLO
首位がまさかのレスターでなければ、プレミアリーグでは2位トッテナムが最大の注目を集める3月となっていただろう。開幕前には7年連続でトップ6が関の山と思われたチームが、55年ぶりのリーグ優勝を狙える位置につけているのだ。
同時に、プレミア4年目でトッテナム就任2年目の指揮官に対する見方は、「勝負の年」から「飛躍の年」へと変化。マウリシオ・ポチェッティーノ監督の引き抜きを狙うクラブには、ルイス・ファンハールの去就が微妙なマンチェスター・ユナイテッドの他に、フース・ヒディンク暫定体制で正監督を物色中のチェルシーが加わった。
チェルシーは、以前からディエゴ・シメオネ(A・マドリー監督)が有力候補と言われ、その後はアントニオ・コンテ(イタリア代表監督)かマッシミリアーノ・アッレグリ(ユベントス監督)の線が濃厚とされていた。だが、2月末の時点でポチェッティーノの代理人にさぐりを入れて好感触を得ている様子。サポーター同士は犬猿の仲にあるロンドン市内ライバルからの引き抜きになるが、北から西への市内越境という点を除けば、理に適った選択肢ではある。
「レガシー」を求めるチェルシーのオーナー。
チェルシーの最大権力者は言うまでもなくロマン・アブラモビッチ。クラブを牛耳るロシア人は、オーナー歴も10年を越えて「レガシー」を強く意識するようになっている。形振り構わずに成功を追い求めた時期は、金に糸目をつけない大型補強に始まったクラブ買収後の過去12年間で終了。
地元行政から建設許可が降りれば来年から6万人収容規模のスタジアム建設が始まるが、表向きの収益拡大という理由よりも、今さら稼ぐ必要のない大富豪としては、自身の影響でサッカーとチェルシーに入れ込む息子への有形の遺産として実現願望が強いといわれている。
ところがチェルシーの現状は、優勝トロフィーの数は飛躍的に増えても、そうした成功とともに継承されるべき伝統のスタイルや、強豪としてのアイデンティティーがない。2004年からのジョゼ・モウリーニョ第1期が長続きしていれば、堅守速攻を身上とする不屈の常勝マシンの如き強豪像が伝統のチェルシー像として確立されていたかもしれない。だが、それはオーナーが好むチェルシー像ではなかった。そしてそれは、戦術面での基本姿勢がモウリーニョと似ているシメオネが新監督となった場合でも変わらない。