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香川真司も驚く「トゥヘル革命」。
ELポルト戦完勝で見せた2つの奇策。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2016/02/19 12:00
ホームスタジアムの「ジグナル・イドゥナ・パルク」でポルトを迎えた監督のトゥヘル。リーグでは単独2位で首位のバイエルンを追う。
トゥヘルの選手起用はもはや誰も予想できない。
それでも、勝利が欲しいという前提の上で、ホームでのファーストレグで失点を避けることが最優先だったこの試合を考えれば、ライトナーでは守備に不安が残るし、ギンターでは攻撃の停滞を招きかねない。そこで守備でも計算ができて、テンポよくパスを散らせるサヒンに白羽の矢がたったわけだ。
2002年からドルトムントの番記者を務める『ビルト』紙のバイラーはこう話していた。
「サヒンの起用には、みんなが驚いているよ。みんなが、ね。カストロがメンバーから外れたのはまぁ、今週の練習で良くなかったからだろうね」
12日前に行なわれたリーグのヘルタ戦で、香川真司が怪我以外の理由ではブンデスリーガで初めてメンバー外になった際、ドイツメディアは驚きを隠さなかった。もはやトゥヘルの選手起用については、誰も予想できない領域にあるのだ。
ほとんど練習したことのない布陣をいきなり実戦投入。
そして、もう1つのサプライズは、ほとんど練習することもなく、これまでにない形で選手をピッチに並べたことだ。
あえて表現するのなら、3-2-4-1となるだろうか。攻撃時には1トップのオーバメヤンの下に香川とロイスが2シャドーのような形で配置し、普段はサイドのFWを務めることが多いムヒタリアンが右サイドに、左サイドバックを務めるシュメルツァーが左サイドに張りだす。そして最終ラインには、右サイドバックが本職のピシュチェクが、ソクラティス、フンメルスとともに3バックを形成する。ボールを獲られてもそのままプレッシャーをかけにいくが、相手のゴールキックから始まるときなどには各選手が本職に近い形で並び、4-2-3-1のような布陣となっていた。
驚くべきは、この戦い方を選手に提示したのが、この日の昼の事だったという事実だ。19時からのナイトゲームに備え、選手たちは昼にクラブハウスに集められ、ミーティングでこの日の戦い方を提示された。そしてクラブハウスの脇の練習場で、動き方とピッチ上での並びを確認する軽い練習を行ない、試合に臨んだ。前日までに、この戦い方を予想した選手などもちろんいない。
「今日わかったことなので。これまで練習はしていなかったですし、ちょっとビックリしました」
香川もそう振り返っている。